| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-079 (Poster presentation)
アブラコウモリPipistrellus abramusは主に建物の隙間をねぐらとして市街地に生息する。本種は昼間はねぐらで過ごし、日没後から日の出まで昆虫類を捕食するために飛翔活動を行う。一方で、非都市部での研究により飛翔活動場所の違いは昆虫の量だけによらないことが示唆されている。また、名古屋大学のキャンパスでの天空率を用いた研究から飛翔活動場所の選択に空間の特性が影響を与えることが示唆されている(塔筋, 柴田 2003)。都市には高層ビルや夜間の照明、騒音、車両の交通などがあり、コウモリにとって複雑で過酷な環境を提供し得るが、アブラコウモリが都市化の進んだ環境でどのように生息しているのかについての研究はまだ少ない。また、東京都の埋立地のような人為的な改変が多くある場所ではアブラコウモリの飛翔活動場所の選好性がより表れると考えられる。そこで、本研究では都市部の埋立地におけるアブラコウモリの飛翔活動の分布を明らかにし、飛翔活動場所の特性を環境要因から把握することを目的とした。
調査地は東京都の都道304号線が貫く北西は勝どきから南東に有明までと南西方面の台場を含む一帯の埋立地とした。2022年にルートセンサスによりアブラコウモリの時間的、空間的な分布を調べ、2023年には調査地内の89地点について空間的な分布を調査した。また、調査ルートにおいて全天空写真を撮影し、DeepLab2を用いた機械学習により画像を空(天空率)、植物、建物に分類し、それぞれの要素が画像に占める割合をRで算出し、環境調査とした。
本研究により、本調査地での2022年、2023年における分布が明らかとなった。その一方で、全天空写真から飛翔活動場所の環境の特徴を読み取ることはできなかった。全天空写真は地上から撮影したものであり、アブラコウモリの飛翔高度と異なる。今後はアブラコウモリの飛翔活動に影響を与える他の環境要因の調査や土地利用などの観点からの分析が求められる。