| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-081 (Poster presentation)
閉鎖的な環境に生息する生物にとって、自身の排泄物による環境の汚染は大きな問題になる。動物は体内の窒素化合物を様々な形で排出するが、両生類の幼生(オタマジャクシ)はこれをアンモニアとして排出する。通常、両生類の幼生は体積の大きい、あるいは水の入れ替わりの頻繁な水場に生息するため、排出したアンモニアは希釈され、自身に害が及ぶ可能性は低い。一方で、狭く、水の入れ替わりの少ない水場に進出した種はこの問題をどのように解決しているのだろうか?
石垣島、西表島、台湾に生息するアイフィンガーガエルは幼生が木の洞や竹の切り株など、樹上の小さな水場(ファイトテルマータ)で、母親の産む栄養卵のみを食べて育つ。このような小さな水場では、アンモニアを便として排出してしまうと、高濃度のアンモニア暴露によって幼生が死亡する可能性が高い。ここで興味深いことに、発表者らは本種幼生が腸内に固形の便を溜め込んでいるにもかかわらず、それを排出せずに変態まで成長することを発見した。
これは、小さな水場での排泄による急速なアンモニア暴露を抑え、水質を維持するための適応形質だと考えた。そこで、我々はアイフィンガーガエル幼生がアンモニアを体外に排出せず、体内に貯めていることを、飼育水へのアンモニア排出量および、腸内容物のアンモニア濃度を計測することで示した。さらに、人為的にアンモニアに暴露することで、本種幼生が高いアンモニア耐性を持つことを示した。