| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-082  (Poster presentation)

行動及び組織の観察に基づいたヤマヨツボシオオアリのサブカースト間分業【A】【O】
Division of labor among subcaste of ants Camponotus yamaokai based on behavioral and organizational observations【A】【O】

*川本高司, 岡田泰和(東京都立大学・理)
*Koshi KAWAMOTO, Yasukazu OKADA(Tokyo Metropolitan University)

一部のアリはワーカー間で形態的に異なるサブカーストを持ち、小型であるマイナーワーカーと、大型で主に頭部が発達したメジャーワーカーに分かれる。マイナーは育児、採餌、巣の維持など広く様々な仕事を行うが、メジャーは巣の防衛や貯蔵、餌の解体など特定の専門的役割を担うことが多い。また、ワーカーは一般的に若齢個体は脂肪量が多く内勤を行うが、老齢個体は脂肪量が減少し外勤の役割に移行する。しかし、サブカーストと齢分業を結び付けた研究は少なく、専門的役割を持つメジャーにおいても同様の傾向が見られるかは不明である。本研究ではワーカー間で明瞭な二型があるヤマヨツボシオオアリを対象に、メジャーの役割を明らかにするため、サブカースト間で採餌、防衛行動や脂肪貯蔵機能、脂肪体の組織観察による生理的な齢変化を比較した。その結果、メジャーは採餌や巣外に出ることはほとんどなく、餌場に他種アリが存在する場合に巣口を塞いで防衛することがわかった。メジャーの体脂肪率はマイナーより低いか同程度であったため、脂肪貯蔵の専門性は特殊化していなかった。脂肪体の組織観察においては、マイナーでは加齢に伴って脂肪体の縮小や脂肪量の減少が見られ、これは典型的なワーカーの齢変化であった。一方でメジャーでは齢に伴った生理的変化は小さかった。これらの結果より、本種のメジャーは若齢の生理的状態を長期間維持し、高齢個体でも外勤への役割の切り替えはほぼ起こらないことが示唆された。


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