| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-084 (Poster presentation)
【背景・目的】 発表者らは、捕食魚であるドンコに捕獲されたニホンウナギ稚魚のうち、約半数がその鰓孔を通って脱出できることを明らかにした (Hasegawa et al., 2022)。一方で、ニホンウナギは海洋での浮遊生活から河口域への着底に伴い、シラスウナギからクロコ、黄ウナギへと発達が進み、形態や行動が大きく変化する。これらの変化は捕食魚の鰓孔からの脱出にも影響し得るが、本種の発達と脱出の成否の関係は未解明である。そこで本研究では、様々な発達段階のウナギ稚魚を用いて、捕食者による捕獲後の鰓孔からの脱出率の変化を調べた。
【材料・方法】 河口域への来遊直後の本種稚魚を用いて実験を開始した。麻酔後、体長・体重を測定したのち、Fukuda et al., 2013 に従い色素沈着の程度から発達段階を識別した。計測から24時間以上経過した後、捕食魚であるドンコに捕獲させ、脱出の有無を調べた。上記の実験を長期的に行うことで、来遊直後のシラスウナギから黄ウナギまでの7つの発達段階計227個体における、捕食魚に捕獲された後の行動データを得た。
【結果・考察】 河口域に来遊直後のシラスウナギ前期の個体は脱出ができず(VIA1期まで;0%, 0/18個体)、着底期にあたるシラスウナギ中期以降の個体のみが脱出に成功した(VIA2期以降;29%, 61/210個体)。シラスウナギ中期以降では発達段階ごとの脱出率に有意な差はなかった。またニホンウナギ稚魚は、シラスウナギ期では、体長や体重が減少し続け、その後のクロコ期、黄ウナギ期では、これらの値は急激に上昇した。以上より、本種は河口域への着底に伴う変態によって、捕食魚の鰓孔からの脱出が可能になることが示唆された。