| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-088  (Poster presentation)

ニホントカゲの尾振り行動の野外観察【A】
Field observation of tail display by Plestiodon japonicus【A】

*柳原諒太朗, 森哲(京都大学)
*Ryotaro YANAGIHARA, Akira MORI(Kyoto Univ.)

トカゲ類の多くで、尾を振る行動(以下、尾振り行動)が多様な文脈でみられる。日本固有種であるニホントカゲにおいても尾振り行動が観察される。ニホントカゲは幼体時に目立つ鮮やかな青色の尾をもつが、成長に伴って、隠蔽的な褐色へと変化する。目立つ尾の色は捕食者の注意や攻撃を自切可能な尾へと逸らす機能があると推測されており、尾振り行動にはこの機能の効果を高める働きがあると考えられている。演者らは、ニホントカゲの尾振り行動を野外環境下で観察した。2022年に行った予備観察の結果、ニホントカゲの尾振り行動には異なる尾の振り方からなるレパートリが存在し、レパートリのうち、尾を持ち上げて左右に振る行動(以下、尾立て振り)は個体発生的に消失する可能性が考えられた。尾立て振りが個体発生的に消失することは、国外の同属他種で複数報告がある一方で、野外における定量的な研究はほぼ皆無であり、消失の詳細なタイミングは不明であった。そこで、兵庫県東部において2023年の夏季にニホントカゲを対象に野外調査を行い、ビデオカメラ撮影による行動観察および周辺環境の記録を実施した。その結果、尾立て振りは体サイズに依存して消失し、そのタイミングは個体の頭胴長が約45 – 60 mmの間のときであることが示された。また、尾立て振りは開けた環境において、上空から視覚を用いて獲物を狙う鳥類捕食者に対して行う行動であるかを調べるために、植物被度と開空度を指標として、尾立て振りが観察された地点の環境を個体が発見された地点の環境と比較した。その結果、低い開空度や高い植物被度の地点であっても尾立て振りは行われることが明らかとなった。以上の結果から、尾立て振りは、地表付近の捕食者との相互作用において個体の生存率を高める機能を持ち、その消失は体サイズの増加に関連して変化する要因によって引き起こされる可能性が示された。


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