| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-091 (Poster presentation)
生殖隔離機構のひとつである行動的隔離は、配偶行動の違いに基づいて交雑が妨害される機構であり、種間交雑のコストを低く抑えることができる。また行動的隔離は急速に進化することが示唆されており、種分化の初期に重要な役割を担う可能性がある。カエル類では広告音による行動的隔離が起こることが知られているが、音響的シグナルを用いた行動的隔離がどのように進化するのかはあまり調べられていない。タゴガエルは、ヒメタゴガエルや隠蔽種と同所的に分布する個体群をもつ。遺伝子解析によると、タゴガエルと近縁種間で過去に遺伝子浸透が起こったものの現在はほとんど完全に隔離されており、同所分布域ではタゴガエルと近縁種との間に生殖隔離が存在することが示唆されている。本研究では、タゴガエルと近縁種の同所分布域における行動的隔離の普遍性とその進化プロセスを明らかにすることを目的とした。単独分布域のタゴガエル、及び、3つの近縁種がそれぞれ同所分布する3つの個体群のタゴガエルを対象として、3つのプレイバック実験を行った。まず、同所分布域での行動的隔離の有無を調べるために、タゴガエルのメスが他種広告音に誘引されるのかを調べた。次に、それを単独分布域のタゴガエルの他種広告音に対する反応と比較することで、行動的隔離が強化によって生じたものであるのかを調べた。最後に、広告音中の音響的形質のうち種認識に用いているものを特定し、行動的隔離のみられた個体群間で比較した。その結果、3つのうち2つの個体群では広告音を用いた行動的隔離が存在することが示され、それは強化によって生じたことが示唆された。またその2つの個体群では、異なる音響的形質を用いて種認識を行っていることから、手がかりとなる形質が変化することで種認識に強化が起こった可能性が考えられた。