| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-093  (Poster presentation)

ヒメイカにおける雌の繁殖力に応じた射精配分戦略の検討【A】【O】
Ejaculate allocation strategy in female fecundity of Japanese pygmy squid【A】【O】

*田辺良平, 佐藤成祥(東海大学)
*Ryohei TANABE, Noriyosi SATO(Tokai University)

 膨大な数の精子を含む射精液や精莢は、使用できる量に限りがある資源なため、雄は各交尾において最大の繁殖成功を得られるように射精配分を行う必要がある。故に、雄には良質な形質を持つ子孫をより多く獲得するために、雌の繁殖力を評価し、質の高い雌に射精量を増大する戦略が進化すると考えられている。しかし、交尾後における雌の行動は雄の戦略を妨げる可能性がある。雌が雄からの移送精子を排除する行動は雄の受精獲得を制限するため、この効果が強ければ、雄は貴重な射精液を多量に配分したところで受精には影響を及ぼさないことも考えられる。精子排除の効果が強い動物では雌の繁殖力に応じた射精配分戦略が発達しないかもしれない。
 ヒメイカの雄は精子塊(精子の袋)を雌に渡すことで精子移送を行うため、その本数から射精量を見積盛り、雄の射精配分パターンを調べることができる。また、移送された精子塊を雌が排除する行動も観察可能であり、雄の射精量に対する精子排除の効果が容易に検証可能である。この特徴を活かし本研究では、産卵数と卵サイズを指標として雌の繁殖力を計測し、その繁殖力と射精量の関係性を調べた。さらに、雌の精子排除後に残った残存精子量を計測し、雌の精子排除が雄の射精に与える影響を検証した。
 その結果、雌の体サイズと産卵数は共変動しなかったが、卵サイズとは有意な正の関係が見られ、体サイズは雌の繁殖力を評価する基準になりうることが確認できた。また、雌の精子排除は高い頻度で発生したが、残存精子量と射精量には有意な正の関係性があったため、射精量の増加に伴い、受精成功は増加することが示唆された。しかしながら、雌の体サイズと射精量には共変動が見られなかった。以上の結果から、ヒメイカの雄は雌の繁殖力に応じた射精配分を行っていないことが考えられる。本結果は精子排除以外の要因が射精配分戦略の進化を妨げている可能性を示唆するものである。


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