| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-096  (Poster presentation)

ハムシ科における性的対立の種間変異:交尾行動形質を指標として【A】
Interspecific variation of sexual conflict in Chrysomelidae:Mating behavior variation among species【A】

*仲江川大夢(弘前大学), 池田紘士(東京大学)
*Hiromu NAKAEGAWA(Hirosaki Univ.), Hiroshi IKEDA(Tokyo Univ.)

 性的対立とは雌雄の繁殖戦略の違いによって生じる雌雄間の利害の対立であり、雌雄の拮抗的な共進化や軍拡競走を駆動することで、繁殖形質の急速な進化を駆動する。そのため性的対立は生殖前隔離や種分化と密接な関わりをもつ点で重要であるが、この性的対立がどのような生態をもつ系統や分類群で強くなりやすいのかといった種間差について検証した研究はいまだ多くない。そこで本研究では、雌雄ともに過激で多様な交尾行動を見せるハムシ科に着目した。ハムシ科は、宿主植物に依存した生活史をもち、多くの種で交尾が宿主上で行われる。このことから、食性幅の違いが雌雄の遭遇頻度に影響を与えることで性的対立の強さと進化的に関係しながら、雌雄の交尾行動が共進化してきたという仮説を立てて検証を行った。
 雌雄の交尾行動と食性幅が進化的に相関しているかを調べるため、実験室環境でハムシ科22種の交尾行動を調べた。性的対立と関係しうる雄の繁殖投資量として、雄の交尾器挿入時間、交尾後ガード時間、雌への噛みつき回数、交尾器挿入中の腹部振動回数を計測した。また、雌における雄への抵抗に関する形質として、雄を蹴った回数、体を横に振動した回数、壁からの落下回数、上翅の開閉回数、頭部を下げた回数を計測した。雌雄間の交尾行動形質の解析結果から、ハムシ科の交尾行動は種間で変異が大きいことが明らかにされた。雄の腹部振動回数と雌の横振動回数には正の相関関係がみられ、また雄が雌に噛みつく頻度が高い種では雌が頭部を下げる頻度が高かった。また、雄の交尾器挿入時間が長い種では、雌が体を横に振り回して激しく抵抗する傾向があった。一方で、食性幅と雌雄の各交尾行動形質との間にはいずれも有意な関係はみられなかった。以上のことから、ハムシ科における雌雄それぞれの交尾行動は、雄から雌への繁殖投資と、それに対する雌の抵抗によって共進化しながら多様化してきた可能性がある。


日本生態学会