| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-097  (Poster presentation)

ツボカビ感染による植物プランクトンのVOC組成変化【A】【O】
Changes in VOC composition of phytoplankton by chytrid fungus Infection.【A】【O】

*藤本周子(龍谷大学), 三木健(龍谷大学), 米谷衣代(近畿大学)
*Chikako FUJIMOTO(Ryukoku Univ.), Takeshi MIKI(Ryukoku Univ.), Kinuyo YONEYA(Kindai Univ.)

真菌類の一つである寄生性ツボカビは植物プランクトンから始まる食物連鎖において重要な物質流を担っている。植物プランクトンがツボカビに感染しているか否かによって、揮発性有機化合物(VOC)の種類や量が変動する。先行研究ではVOCの組成変化が示されたが植物プランクトン-ツボカビ由来のVOCと細菌由来のVOCを明確に分離していないため、VOC源が不明である。そこで、培養条件や培養後の濾過方法を変更し実験を行なった。本研究は珪藻の単離株(Ulnaria sp.)を対象とした。寄生者は珪藻を宿主とするツボカビ門寄生菌類を使用した。珪藻のみ、珪藻と抗生物質、珪藻と抗生物質とツボカビ、WC培地のみの4処理を行なった。珪藻をツボカビに感染、非感染状態で2週間培養し、抗生物質を添加した。これにより、同定されたVOCが珪藻-ツボカビ由来のものか、細菌由来のものかを分離できる。VOCはTwisterで24時間回収し、GC/MSで分析を行なった。珪藻のみからは、1,4-beta-5-trimethyl-9-methylenebicyclo[3.3.1]nonan-2-oneなどのVOCが同定された。これらのVOCは珪藻+抗生物質の処理からは検出されなかったため、細菌から放出された可能性が高い。珪藻+抗生物質からは1-Methyl-3-(3,4-dimethoxyphenyl)-6,7-dimethoxyisochromeneなどが同定されたが、これらは珪藻から検出された可能性が高い。珪藻+抗生物質+ツボカビからは、+/-.-2-Methoxy-3,8-dioxocephalotax-1-eneなどのVOCが同定された。これらはツボカビ感染によって放出されたものと考えられる。現在、この実験で特定されたVOCの濃度勾配を用いて、ツボカビの遊走子が走化性を示すかどうかについて更なる実験を進行中である。


日本生態学会