| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-101 (Poster presentation)
生活史は個体がいつ成熟し、どのくらいの子供を生み、いつ死亡するかを表す。先行研究から、生活史は性成熟するまでの時間や寿命など、時間に関係する表現型の集まりである早い-遅い連続体と、出産数に関連する量の二次元平面上に分布することがわかっている。しかし、時間に関係する量と出産数の間にどのような関係があるのか、また、その関係が分類群によらず存在するのかは明らかになっていない。そこで、本研究は多くの生活史データが得られている脊椎動物に着目した。様々な生活史表現型の分布を確認するために主成分分析を行ったところ、先行研究と同様にPC1 は早い-遅い連続体に対応し、PC2 は出産数に対応していた。ここで確認された生活史の分布を、様々な分類群(目と科)に着目して確認したところ、哺乳類と鳥類の生活史は、時間に関係する表現型と出産数の片方のみが多様化していた。また、片方の表現型のみが多様化する性質は爬虫類、両生類、魚類にも存在した。さらに、この性質は脊椎動物の綱にも存在した。したがって、脊椎動物には性成熟期か出産数の片方のみが多様化する性質が、様々な分類階級に共通して存在することがわかった。
次に、性成熟期間と出産数の分布がどのような生態学的な仕組みから生じるのかを理解するために、個体群増殖に年齢分布を考慮したMcKendrick-Von Foerster方程式を用いた。この方程式に生存関数としてWeibull関数、出生率としてスイッチ関数を代入し、環境から受ける影響を単純な関数で導入した。この微分方程式の固定点を調べ、その固定点において生活史表現型がどのような分布をとるかを調べたところ、Weibull関数内のパラメーターを変化させることにより、哺乳類型と爬虫類型の生活史の分布が再現された。また、環境から受ける影響の大きさによってどのような生活史をとるかが変化した。このことは、r-K戦略の移り変わりと生活史表現型の分布の移り変わりの対応関係の一端を表していると考えられる。