| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-104  (Poster presentation)

河川上流部の降雨による流速変化はアカハライモリの移動を発生させる【A】【O】
Changes in the flow velocity by the rainfall events cause the dispersal of Cynops pyrrhogaster in headwater.【A】【O】

*小川さくら, 吉村謙一(山形大学)
*Sakura OGAWA, Kenichi YOSHIMURA(Yamagata Univ.)

 河川生態系を構成する両生類が将来的な降雨増加に対してどのような影響を受けるのかを予測するためには、河川内の流速増加に対する両生類の行動的応答を解明する必要がある。両生類成体は陸域での活動が可能であるため、流速増加に対する応答を解明するうえで陸域選択についても考慮する必要がある。しかし、実河川において陸域選択を含めた降雨時の応答を解明した先行研究は少ない。そこで本研究はアカハライモリ(Cynops pyrrhogaster)を対象とし、降雨に伴う流速増加時の水域内での環境選択及び陸域選択による応答を解明することを目的とした。
 まず、河川上流部における生息環境として代謝と採餌両方の観点から陸域に比べて水域の方が生息に適していた。かつ水域内では低流速環境を選択していたことから、流水域の生息地としては低流速環境が適することが分かった。
 河川内の流速は時間的な変動が大きく、降雨時には流速が速くなるが、源流部に限っては降雨時であっても流速変化が少なく、恒常的な低流速環境が保たれる。各調査日で個体識別を行い、個体ごとの水域内の移動距離を推定した結果、源流部の恒常的な低流速環境では降雨時であっても移動が発生しないことが分かった。源流部以外の流速変化の大きい環境では降雨時にどのような行動を示すのか、陸域選択を含めた応答を解明するために、河川に陸域と水域を自由に移動可能なプロットを設置し、降雨時の陸域選択個体数の変動をインターバルカメラによって連続的に観察した。その結果、降雨時には陸域を選択することが分かった。
 以上の結果から、アカハライモリは流速変化が大きい河川上流部でも、代謝・採餌の観点から生息に適した水域内で低流速環境を選択し、降雨時も流速変化の少ない源流部では同じ低流速環境内に留まる。しかし、降雨に伴い流速変化が発生するような環境では一時的な陸域選択により高流速を回避することが結論づけられた。


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