| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-107  (Poster presentation)

トウキョウコシビロダンゴムシの生活史における温度・光周期・密度の影響【A】【O】
Effects of temperature, photoperiod, and density on the life history of Spherillo obscurus【A】【O】

*永田健人, 太田祐子, 松倉君予, 西村知良(日本大学)
*Kento NAGATA, Yuko OTA, Kimiyo MATSUKURA, Tomoyosi NISIMURA(Nihon Univ.)

ダンゴムシと呼ばれるグループは日本に3科存在するがその中のコシビロダンゴムシ科についてはほとんど研究がない。本研究では関東平野にて局所的に生息するトウキョウコシビロダンゴムシSpherillo obscurusの季節適応を調べるために、成長や繁殖に対する温度、光周条件、密度の影響を観察した。2022年3月から6月に東京都世田谷区で約200個体を採集、恒温器にて温度2条件(20℃、25℃)、光周条件2条件(LD16:8(長日条件)、LD12:12(短日条件))、飼育密度4条件(6頭区(♀3頭♂3頭)、2頭区(♀1頭♂1頭)、♀1頭区、♂1頭区)の計16条件(各条件n=5)のいずれかで飼育し、成長や繁殖について毎週測定した。
生存数は少しずつ減少し20~30週に約半数に、生存率は雄よりも雌が高く、25℃より20℃の方が高かった。
体重は、飼育期間を通じ平均して約17mgから24mgに増加した。実験中を通して♀の体重は♂に比べ大きかったが、温度・光周条件・密度による体重への影響はなかった。
脱皮はいずれの条件でも見られ、脱皮頻度は約0.05回(個体あたり週あたり)だった。脱皮頻度における光周条件・密度・性別による違いは無かったが、20℃より25℃の方が高かった。
産仔はいずれの条件でも見られ、産子頻度は約0.02回(♀1個体あたり週あたり)だった。光周条件・密度による違いは無かったが、20℃より25℃の方が高かった。
産仔1回あたりの数は平均5.4頭だった。産仔数への温度・光周条件・密度の影響は無かった。
以上のことから光周期ではなく主に気温に合わせて活動が変化する生活史だと考えられ、長期の飼育には低温条件、行動観察には高温条件が適している事が示された。産仔回数・産仔数ともに密度の影響が見られなかったことから他のワラジムシ亜目同様の貯精能力を持つとわかった。


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