| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-110  (Poster presentation)

排他的に分布するメダカ2種の性的な種間相互作用について【A】【O】
Sexual interspecific interactions between two exclusively distributed Oryzias species【A】【O】

*畠中美伽, 高倉耕一(滋賀県立大学)
*Mika HATANAKA, Koh-Ichi TAKAKURA(Univ. Shiga Pref.)

 近年、多くの淡水魚類で、飼育個体の放棄や、保全や漁業を目的とした放流による、近縁種間の雑種形成や遺伝子浸透、それに伴う在来種絶滅が問題となっている。放流個体と交雑することで在来個体群の適応度が低下する可能性が示唆されているが、その具体的なメカニズムは分かっていない。外来遺伝子の頻度が高まるためには、外来種の適応度が高いか、交配がランダムでないなどの交雑の方向性が生じる、近縁種間で起こる誤った求愛により次世代数を減らす繁殖干渉が生じているなどの可能性が考えられる。近縁外来種との交雑が知られている魚類は多いが、それらのほとんどで交雑による在来種絶滅のメカニズムが実証的に明らかにされていない。
 そのような例の一つとしてメダカが挙げられる。メダカはかつて水田や水路など至る所に生息していたが、現在では個体数が減少し、絶滅危惧種Ⅱ類(VU)に指定されている。さらに、近年は交雑問題も懸念されている。日本に分布するメダカ類は、2012年にミナミメダカOryzias latipesとキタノメダカOryzias sakaizumiiの2種に分けられた。この2種は、遺伝的に違いがあるが種を同定できるほどの形態的な違いは無く、飼育下と野外ともに交雑を行うことが知られており、それらの雑種も子孫を残すことが分かっている。基本的に2種の生息地域は異なるが、一部の地域では2種が分布し個体群同士の境界域に交雑個体が存在する。また、他地域からの放流個体との交雑による雑種形成や遺伝子浸透が報告されている。
 そこで本研究では、室内での繁殖が容易なミナミメダカとキタノメダカを用い、他地域からの人為的な移入を想定した状況で配偶実験を行った。異種オスが存在する場合の産卵数、受精卵数と孵化率を、異種オスが存在しない場合と比較し、近縁種間で生じる遺伝子浸透の方向性や繁殖干渉が生じるかどうかを検証した。


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