| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-111  (Poster presentation)

カダヤシ雌が放出する化学物質は同種雌だけでなく他種にも悪影響を及ぼす?【A】
Do the chemicals released by female mosquitofish adversely affect not only conspecific females but also  heterospecific fish?【A】

*山崎展, 鶴井香織, 辻和希(琉球大学)
*Hiraku YAMAZAKI, Kaori TSURUI, Kazuki TSUJI(UNIVERSITY OF THE RYUKYUS)

 同種や他種の個体の成長を化学物質の放出により促進・抑制させる現象をアレロパシーといい、植物では多くの事例がある。一方、動物では捕食や攻撃など直接的相互作用が顕著なためか、化学物質の環境中への放出を介した他個体の成長抑制についての知見は、社会性昆虫などの種内相互作用の例にほぼ限られる。カダヤシの成魚雌は、同種雌の成長や繁殖を抑制する水溶性の化学物質を放出する(Lutneskya & Adkins 2003)とされるが、他種への影響は不明である。本研究は先行研究を追試し、想定される物質が同種雌の成長・繁殖等に与える影響を定量化した。さらに、他種の生存率に与える影響を検討した。
 沖縄島に野生化したカダヤシと、沖縄島でカダヤシと競争関係にある野生化グッピーを使用した。4L水槽で、カダヤシの成魚雌2匹(物質を出させる魚)と「物質」に暴露される個体を、水のみ出入りする不透明な容器で隔離して飼育した。3つの暴露実験を行なった:①カダヤシの稚魚から成熟するまでの115日間暴露、②カダヤシの若い処女雌を14日間暴露、③グッピーの稚魚を成熟するまで115日間暴露。
 カダヤシの稚魚から成熟するまでの115日間の暴露の結果、暴露区では体長・体重・卵巣重量・成熟卵数・肝臓重量が有意に小さく、体形が有意に細長くなったが、卵巣重量・成熟卵数・肝臓重の体重に対する比は処理間で差は無かった。カダヤシの若い処女雌に対する14日間の暴露では、体重を説明変数に組み込んだ一般化線形混合モデルにより暴露の効果を解析した結果、暴露区では保有する成熟卵数の有意な減少と未成熟卵の割合の有意な増加が認められた。また、生存時間分析の結果、グッピー稚魚は暴露区で生存時間が有意に短くなった。総合すると、カダヤシ成魚雌が放出する化学物質は、同種の成長と成熟後の繁殖に負の影響を与え、他種稚魚の生存率を低下させる可能性が示唆された。


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