| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-116 (Poster presentation)
カツオ(Katsuwonus pelamis)は高度回遊性魚類であり、日本を含む多くの国々にとって重要な水産資源である。適切に資源を管理するには定期的に資源評価を行い、資源量が維持できているのか判断する必要がある。正確な資源評価には年齢、成長、繁殖に関する知見が重要であるが、外洋を広く回遊する本種では断片的なものに限られる。特に、産卵行動を捉えることは極めて困難である。そこで本研究では、飼育条件下で発生するカツオの産卵行動を観察し、発生頻度・参加する個体数を報告する。加えて、ステレオ画像計測を用いることで産卵に参加する個体の尾叉長を求める。本研究は2022年9月6, 7日に、かごしま水族館で飼育されているカツオを対象に行った。金属フレーム1つあたりに防水カメラを複数台固定して作製したマルチ・ステレオカメラをロープで水槽内に係留し、カツオの産卵行動を撮影した。映像から産卵行動を抽出し、産卵に参加する個体数を記録した。また3次元動画解析ソフトを用いて尾叉長を推定した。産卵行動は先頭個体を1 - 5尾の個体が追尾する形で発生し、その後、放精に至るものも確認された。1尾のみの追尾がもっとも多く、追尾数が増加するにつれて発生頻度は低下したが、放精を確認できた事例は複数追尾時の方が多かった。1尾のみが追尾するときと比べ、複数に追尾される先頭の方が、尾叉長の大きな個体が多かった。追尾個体に関しては、追尾数によって尾叉長組成に先頭個体ほど顕著なピークのずれは確認されなかった。また複数での追尾時には、比較的小さな個体も追尾に参加していた。まとめると、1尾のみの追尾は、先頭より追尾個体の方が大きい、不均衡な形で多く発生した。対して、複数による追尾では、先頭と追尾個体に顕著な差は見られず、小さな個体もわずかに参加していた。さらなる検証は必要であるが、先頭の体サイズによって追尾数が異なり、ひいては繁殖成功に影響する可能性がある。