| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-120 (Poster presentation)
樹木の種子は、種子食者から種子を防御するために様々な化学防御物質を含んでいる。ドングリ類では種子中に含まれるタンニンなどのフェノール類が、マツ類の種子ではα-ピネンやリモネンなどのモノテルペン類が化学防御物質として知られている。アカネズミとヒメネズミは日本の森林に同所的に広く生息する種子食者である。同じ森林に生息するアカネズミとヒメネズミでは、アカネズミはドングリ類をヒメネズミはマツ類の種子をより多く摂食することが明らかにされている。本研究では、これら2種のネズミの食性について、化学成分の異なる人工飼料の選択性を調べ、種子中の化学成分の影響について検討した。さらに、飼育下で生まれた個体と野外捕獲個体の比較も検討した。ドングリに含まれるタンニンの餌選択については、タンニン酸とグルコースの濃度を変えた人工飼料を4種類作成し(C:小麦粉のみ、G:グルコース添加、T:タンニン酸添加、GT:グルコース+タンニン酸添加)、摂食量を分析した。出生や種に関わらず、いずれもGを最も好み、次いでCの摂食量が多かった。また、糖が含まれていてもタンニンに対する忌避性は変わらなかった。さらに、ヒメネズミはアカネズミに比べてGをより好み、TやGTをより忌避することが示された。マツ類の種子に多く含まれるモノテルペン類については、4種類の人工飼料を作成し(C:粉砕したクルミ、P:α-ピネン添加、L:リモネン添加、PL:α-ピネンとリモネン添加)、タンニンの餌選択実験を同様に行った。アカネズミとヒメネズミとも、コントロールをより摂食し、モノテルペン類を添加した餌の摂食量は少なかった。また、ヒメネズミの方がアカネズミよりもモノテルペン類に対する忌避性がやや弱い傾向があった。