| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-121  (Poster presentation)

都市シロツメクサの防御物質の進化的喪失はハチ類の蜜選好行動や形質を変化させるか?【A】【O】
Does evolutionary loss of defensive compounds in urban white clover alter bees' nectar preference behavior and traits?【A】【O】

*松井悠眞(北海道大・環境科学院), 石黒智基(北海道大・環境科学院), 内海俊介(北海道大学・EES)
*Yuma MATSUI(Hokkaido Univ.Env.Science.), Tomoki ISHIGURO(Hokkaido Univ.Env.Science.), Shunsuke UTSUMI(Hokkaido Univ.EES.)

都市化は、生物多様性を低下させ生態系サービスを劣化させると考えられる。一方、都市化は生物の進化にも影響を与えることが明らかになりつつある。都市進化による形質変化も生態系サービスへ影響を及ぼしうるが、その実態は明らかにされていない。そこで、都市においても重要な生態系サービスの一つである送粉サービスに着目し、この問題について検討する。送粉サービスを担うハチ類の重要な蜜源にシロツメクサがあり、シロツメクサにおいては都市進化の知見が蓄積している。シロツメクサは防御物質であるシアン化水素の生成材料であるシアン配糖体を持つ。が、都市において配糖体の喪失進化が起きている。植物の二次代謝物質は花蜜にも含まれ、送粉者の訪花行動にも影響が生じうることから、この喪失進化はハチ類の選好行動へ波及することが予測される。さらに、都市化がハチ類の形態に影響する事例も報告されている。
そこで本研究は、都市化がセイヨウミツバチ(ミツ)、セイヨウマルハナバチ(マル)、ニセハイイロマルハナバチ(ニセ)の送粉関連形質に与える影響を明らかにすることを目的とする。特に、1)防御物質の喪失進化を介して訪花昆虫の選好行動を促進するか、2)都市-郊外間で形態形質に違いがあるか、を解明する。
配糖体の生成型と非生成型の遺伝子頻度をもとに都市部と郊外部の調査地を定め、シロツメクサに訪花するハチを採集した。スクロース水溶液と、配糖体添加液を作成し、選好実験を行った。そして胸部幅と前翅長を計測した。
ミツでは郊外由来個体に選好性は見られなかったが、都市由来個体は配糖体含有蜜への有意な選好が検出された。また、マルは都市部に、ニセは郊外部に出現した。マルとニセはそれぞれ都市と郊外のミツに対応する選好性を示した。一方、形態に対する都市・郊外の影響は検出されなかった。以上より都市化による配糖体の喪失進化はハチ類の選好行動に影響することが分かった。


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