| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-122 (Poster presentation)
ノウサギの食害は、植栽木の先端を切断することから樹木の生長を著しく阻害することが知られている。秋田県沿岸域に位置する秋田県立大学周辺のマツ林では、近年マツ枯れ被害が拡大し、2023年に一部の区域で伐採と植栽が行われたため、植栽木がノウサギの食害を受ける可能性がある。ノウサギの行動と食性について明らかにすることは、被害を受けやすい樹木の選定と植栽木の保護を効率的に行うために重要である。そこで、本研究では2023年5月~12月にかけて、カメラによる観察と食痕の有無からノウサギの行動と食性を明らかにした。
まず、伐採地に設置した赤外線センサーカメラで、ノウサギが撮影された地点と時間を動画で記録した。その結果、5月と7月~9月に7地点で計24回ノウサギが撮影され、摂食行動は午後と夕方で見られた。次に、マツ林内の樹木において、新たにノウサギの食痕が見られた樹種と場所を毎月の踏査により記録する調査と、伐採地内のプロットで1m以下の全ラメットの食痕の有無を調べ、食痕がある割合(食痕があるラメット数/全ラメット数)を樹種ごとに求める調査を行った。その結果、2つの調査に共通して、ガマズミ、ナツハゼ、カスミザクラ、ウワミズザクラで食痕が多く確認され、食痕があるラメットの割合も高かった。これらの種は、マツ林内の優占種ではないものの、ノウサギの嗜好性が高いと考えられる。反対に、アカマツやカシワ等は優占種であるが、食痕はほとんど確認されなかったことから、嗜好性は低いと考えられる。また、ガマズミは季節を問わず食痕が確認されたが、ナツハゼやカスミザクラでは夏に確認される食痕数が減少したほか、サンショウ等で冬になるにつれて確認される食痕数が増加する樹種もあった。
本研究では夏季の結果に注目したが、日本海側ではノウサギの食害は冬に多発するため、今後さらに冬季の調査を行い、通年を通したノウサギの行動と食性を明らかにしたい。