| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-123 (Poster presentation)
多くの植物群集内では開花種の間で送粉者の共有が起こっている。送粉者が異種間を移動することによって起こる花粉移動は、異種花粉の柱頭付着や自種花粉の損失などを引き起こすために、植物の繁殖成功を低下させると考えられてきた。送粉者にはスペシャリスト送粉者とジェネラリスト送粉者がみられることが知られているが、この分類は種を単位として訪花を観察した結果から推定していた側面があった。この時、ジェネラリスト送粉者とされる種の個体が、スペシャリスト送粉者にみられるような振る舞いをしていた場合、各個体は植物の繁殖成功を促進するスペシャリストと呼べる存在になりうる。これを確かめるには、送粉者の各個体を追跡して訪花履歴を明らかにする必要がある。そこで本研究では、①野外環境下において多様な訪花昆虫分類群の異種間飛行の起こりやすさを個体レベルで定量化し、これに違いがあるのか明らかにすること。②野外での開花状況を定量化し、異種間飛行がどのような開花状況下で起こりやすいのかを明らかにすること。これら2点を目的とした。多様な送粉者における異種間飛行の起こりやすさを調べるため、長野県上田市の菅平高原にて訪花履歴の観察を行った。また異種間飛行に影響を与える要因を明らかにするため、プロット内の開花植物多様度、開花量・均等度・分布様式、花の大きさ・構造・花色・開花高について定量化を行った。この結果、ジェネラリスト送粉者とされる小型ハナバチ類やハナアブ類は、スペシャリスト送粉者とされる大型ハナバチ類に比べて異種間飛行率は高かったものの、多くの送粉者で特定種の花を連続的に訪花する行動がみられた。本研究から、同所的・同時期に開花する植物種は他種と異なる開花状況や花形質の違いを生み出すことで、ジェネラリスト送粉者媒であったとしても送粉者の各個体の異種間飛行を減少させることが可能になると考えられる。