| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-129  (Poster presentation)

マルハナバチの花粉付着部位の限定が異種間花粉移動におよぼす影響【A】
Effects of restricting pollen placement in bumblebees on interspecific pollen transfer.【A】

*和田渚(筑波大学)
*Nagisa WADA(Tsukuba Univ.)

同時期に花を咲かせる植物種の間では、送粉者を介した異種間花粉移動が起こると予想される。異種間花粉移動は、花粉親にとっての損失となるだけでなく、花粉を受け取る側にも、同種花粉の受粉率や結実率の低下という弊害をもたらす。しかし自然界では、多くの植物種が同時期に開花する。彼らは一体どんな手段で、異種間花粉移動を回避しているのだろう? 先行研究では、葯の提示位置や送粉者の姿勢を安定させる花の形態が、花粉が付着する送粉者の体表部位を限定する作用を通じ、異種間花粉移動を抑えるとしばしば推測されてきた。たしかに花粉付着部位の限定は、ハナバチによる毛づくろいの「死角」に花粉を付けたり、他種との葯の接触部位の重複による干渉を防いだりできる点で、雄機能に有利であると容易に想像できる。一方で、柱頭に運び込まれる異種花粉を減らすか、つまり雌機能の改善をもたらすかどうかは自明ではない。そこで本研究では、長野県菅平高原で同時期に開花するマルハナバチ媒花、ノアザミ、ウツボグサ、ヤマホタルブクロの3種を対象に野外実験をおこない、ハチの体表上における花粉付着部位の限定が、他種との利用部位の重複や、異種花粉が運び込まれる確率に及ぼす影響を調べた。その結果、花粉付着部位を強く限定するウツボグサでは、他種との利用部位の重複が少なくなることが分かった。また、花粉付着部位を限定する種ほど、異種花粉の付着量が、相手種の限定度によらず一定レベルに抑えられた。 ただし、限定度が高い種は、同種花粉が少ない部位に柱頭が触れてしまった場合、逆に異種の、とくに付着部位を限定しない種の花粉を受け取りやすい傾向もあった。以上より、花粉付着部位の限定には、他種と利用部位の重複を防ぎ、異種花粉の受け取りを低く抑えるという雌機能の改善効果をもつ反面、葯と柱頭の接触部位がずれると大量に異種花粉を受け取ってしまう危険もあることが明らかとなった。


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