| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-136  (Poster presentation)

植物の三密戦略:密集花序が多様な訪花昆虫による送受粉に及ぼす影響【A】
Close, Crowded, and Contact: effects of compact inflorescences on pollination by diverse flower-visiting insects【A】

*田中歩, 大橋一晴(筑波大学)
*Ayumu TANAKA, Kazuharu OHASHI(Tsukuba Univ.)

多数の小さな花を集合させる「密集花序」は、異なる分類群で何度も独立に進化した。密集花序はさまざまな昆虫に訪問されるケースが多いことから、多種多様な訪花昆虫をうまく送受粉に役立てるための、1種の機能的収斂ではないかと推測される。しかし、密集花序がどんなしくみで形態や行動が異なる昆虫による送受粉を実現しているのかについては、よくわかっていない。今回演者らは「密集花序は訪れた昆虫に花間を歩いて移動させることで、昆虫の形態によらず確実に葯や柱頭に触れさせる」という仮説の検証を試みた。まず、筑波山麓に自生するハナウドを対象とした操作実験では、30株の小散形花に、以下の3つの処理を施した:無処理、縮小処理(花序を小さくするように小花の2/3を塊として除去)、間引き処理(密な小花を間引くように2/3を除去)。間引き処理は他の2処理より小花の密度が低いため、訪れた昆虫が小花間を歩いて移動する頻度が減るはずである。この予測通り、間引き処理では昆虫が小花間を飛んで移動し、歩行移動による他の小花への接触が減るため、昆虫が小花を1つ採餌するごとに触れる小花の総数が、他の2処理に比べ有意に減少した。効果の強さは昆虫の種類によって異なるものの、全体として小花の密集は送受粉に貢献しうる昆虫のタイプを増やす傾向があった。また、蛍光粉末を用いて葯に触れた昆虫の体表部位を調べたところ、間引き処理では他の2処理に比べ胸部への接触が減ることがわかった。次に、小花密集の効果が送粉量に及ぼす影響を、花粉を量子ドットで標識したソバの圃場実験で調べた。縮小処理と間引き処理を施した花序の花粉を異なる色の量子ドットで標識し、他の株の柱頭に運ばれた花粉を計数したところ、間引き処理をした花序の送粉量は少ない傾向がみられた。今後はさらに異なる昆虫のタイプ間で、密集花序と間引き花序における採餌行動の違いを詳しく比較する予定である。


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