| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-137 (Poster presentation)
果実食の小型・中型鳥類が生態系において重要な種子散布者であることはこれまでも多くの研究で注目されてきた。一方で雑食性の大型鳥類であるカラスは種子散布者として注目されることは少ない。いくつかの先行研究においてカラスが種子散布者として機能することが示されているが、周年詳細に果実利用を追ったものは少ない。また、鳥類はフンとペリットの2つの排泄方法を持つものの、カラスの食性や果実利用の研究ではペリットの内容物を調べることが多かった。しかし、先行研究によりフンの方がペリットよりも種子散布距離が大きいことが示されており、フンとペリットに含まれやすい種子にどのような違いがあるかというのは、カラスの種子散布を評価するために重要な情報であると考えられる。
本研究は、カラスによる散布を次の2点に着目して行った。1)季節変化:季節によって利用する果実の種類や種子数、その利用の頻度にどのような特徴があるか?2)フンとペリットそれぞれに含まれやすい種子の特徴:種子サイズが大きいほどペリットに含まれやすくなるのか?
調査は新潟大学構内で2023年の5月から翌年2月にかけて行われた。調査地は周年280から450羽のハシブトガラスとハシボソガラスのねぐらとして利用されているため、安定してフンとペリットを採取することができた。採取したフンとペリットの内容物を2週間に1度の頻度で調べた。種子は種ごとに含まれていた頻度と種子数を記録した。
季節変化を出現の頻度で見た結果、春はサクラの種子が単独で高い頻度を示し、秋はハゼノキやコブシなどの複数種が比較的低い頻度で同時期に出現するという違いが見られた。また、種子サイズと、その種子のペリットへの含まれやすさを相関係数を用いて解析した結果、種子サイズが大きいほどペリットに含まれる頻度が高くなることが明らかになった。このことから、種子サイズが大きいほど散布距離が短くなりやすいと考えられた。