| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-138 (Poster presentation)
軟体動物門腹足綱の嚢舌類に属するウミウシは、摂餌した藻類の葉緑体を一定期間体内に留めて光合成に利用する「盗葉緑体現象」で知られている。そのため、この種では葉緑体をすぐには消化せず、数日から数か月保持するという性質をもつ。嚢舌類の一部は、藻類の細胞壁に穴を開けて細胞内容物を吸い込むことで摂餌を行う。その際、一度吸い込んだ細胞内容物を食道から胃に送り込む前に頬嚢にため、唾液と共に同じ藻体に吐き出し、再び吸い込むという過程を繰り返す「吐き戻し行動」を示すことが報告されている。一般に嚢舌類は狭食性であるが、一部の嚢舌類は同属の複数の種を摂餌することが知られている。従って、一度吸い込んだ藻類の細胞内容物を、他の藻類に吐き戻した場合、摂餌の過程で、ある藻類から別の藻類へと葉緑体を含む細胞内容物が移動し、嚢舌類と藻類の共進化を引き起こす可能性がある。本研究では、吐き戻しによる葉緑体の移動が原因で、嚢舌類が藻類の葉緑体の進化に与える可能性を調査した。摂餌の際に吐き戻しを頻繁に行うコノハミドリガイ種群を用いて、そのミトコンドリア遺伝子から系統樹を作成した。また、コノハミドリガイ種群が保持している葉緑体遺伝子から食藻を特定し、その食藻の系統樹を作成した。コノハミドリガイ種群と食藻類の系統関係とそれらの関連性をコード化する行列を用いてRandom Tanglegram Partitions(Rtapas)の手法で2種間の系統の分岐パターンを比較した。その結果、コノハミドリガイ種群は4つの群に分かれ、食藻類は4系統あることがわかった。両者の関係について調べたところ、共種分化を示唆するパターンがみられた。