| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-144  (Poster presentation)

ミカンとヤノネカイガラムに対する異なる元素ナノ粒子の葉面散布の影響【A】【E】【O】
Impact of foliar applications of different elements of nanoparticles on mandarin orange and scale insects【A】【E】【O】

*高思奕, 津田みどり(九州大学)
*Siyi GAO, Midori TUDA(Kyushu Univ.)

近年の農業では、従来の化学肥料よりも効率的で散布量や副作用の少ない方法として、ナノ肥料やナノ殺虫剤が注目されている。しかし、ナノ粒子が昆虫の選好性や植物の物理化学的特性に与える影響はまだよく分かっていない。そこで本研究では、ナノシリカ、ナノセレン、およびバルクシリカの葉面散布が①ヤノネカイガラム(ヤノネ)個体数とミカンの葉面積に及ぼす影響を温室環境で調査、②処理葉と対照(水処理)葉間のヤノネ幼虫の選好実験、③SEM-EDXを用いた葉の元素含有量およびレオメーターを用いた葉の強度の定量を行った。結果、葉当たりのヤノネ密度はすべての発育段階で葉面散布処理により減少した。特に、バルクシリカ処理とナノシリカ処理が幼虫個体数に顕著な影響を及ぼした。幼虫はバルクシリカまたはナノシリカ処理葉を選好し、ナノセレン処理葉を忌避した。ナノシリカとナノセレンは葉の発育を促進した。バルクシリカとナノシリカ処理は葉の強度を向上させたが、ナノセレン処理ではそのような効果がなかった。葉の強度は葉肉のシリカ含量と正の相関があった。葉当たりの虫密度は、葉の強度と正の相関があった。本研究は、半翅目昆虫に対する忌避剤としてナノセレンを、葉の強度の向上のためにバルクシリカとナノシリカを適用できる可能性を明らかにした。同時に、葉の硬さがヤノネのような吸汁性昆虫に選好されることを初めて明示した。
We investigated the impact of foliar spraying with nanosilica and nanoselenium, as well as bulk- silica (SiO2) on arrowhead scale (Unaspis yanonensis) population size and choice behavior, and the mandarin orange (Citrus unshiu) in a greenhouse environment. This study highlights the potential use of nanoselenium as a deterrent against the hemipteran insect, and bulk-silica and nanosilica for enhancing leaf toughness to attract the sessile sucker herbivore as a lure.


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