| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-145 (Poster presentation)
気候変動が生物に与える影響のひとつとして、相互作用する生物間のフェノロジーのずれを介した間接的な影響も見過ごせないことが報告されている。特に、出現時期の限られている植食性昆虫は、寄主の開花や展葉といったフェノロジーの影響を受けやすいと考えられる。気候変動が植食性昆虫のフェノロジーに与える影響については、今後長期的にモニタリングによって評価していくことが重要である。そこで本研究では、その対象種を選定するための事前情報として、植物のフェノロジーや昆虫の生活史特性の関係を明らかにすること目的とした。秋田県沿岸域に身近に見られる植物39種を対象とし、植物のフェノロジーとそれらに来訪している植食性昆虫の種類について、2023年4月から12月までの期間に3日から14日に1回程度の頻度で記録した。また、対象植物の食害率を展葉期、成葉期、落葉期にそれぞれ記録した。来訪が確認された植食性昆虫については図鑑等から、生活史特性(出現時期、発生回数、越冬形態、食性幅、摂食様式、摂食部位)を調べた。
植食性昆虫は同定できたもので5目45科107種が確認された。生活史特性のうち、発生回数については、摂食様式のうちゴール性が主に年一化であるという関係がみられた。食性幅の狭い種については、分類群のうちハエ目やハチ目が、摂食部位ではつぼみが、摂食様式ではゴール性や潜葉性が、それぞれ多い傾向にあった。また、ハエ目やゴール性の昆虫で、それぞれ出現時期が限られた種が多くみられた。また、つぼみや果実を食害する種において、出現期間の長いものの多くは広食性の種であり、狭食性の種の出現時期が限られているのは寄主の食害可能な期間が短いためだと考えられる。
以上の結果を踏まえて、発生回数や出現時期が限られ、食性幅が狭い種に着目して、寄主植物とのフェノロジーのずれによる影響を受けやすい特性をもつ種や分類群について議論したい。