| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-146  (Poster presentation)

ヤナギマルタマバエが形成したゴールのフェノロジーとヤナギへの影響【A】【O】
Phenology of the gall formed by a midge and its effect on willow【A】【O】

*田之畑穂花(大阪公立大学)
*Honoka TANOHATA(Osaka Metropolitan University)

ゴールを形成する昆虫の中には、母親個体が産卵選好性を持つ植食性昆虫が存在することが分かっています。また植物個体の生長がよい部位では、植食性昆虫や幼虫にとって、資源を十分に得やすく、生存に有利である為に、その部位に対する親の産卵選好性があることも予測されている(Price, 1991)。ゴール形成性昆虫の一部である、植食性タマバエの生活史や生存戦略は種によってもきわめて多様である。特に本研究で用いるヤナギマルタマバエについてはあまり研究が為されていない。本研究では、ヤナギマルタマバエのゴールが形成と、その部位の生長に相関関係があるかどうかを明らかにすることを目的とする。
フィールドワークでは、ゴールの有無とジャヤナギ個体のシュート長と太さの関係を、紀の川河畔林にて調査した。8本のジャヤナギ個体からランダムにゴールのついている枝とついていない枝を40本ずつ選び、シュート長と太さを半年間にわたって測定した。さらに、ゴールの解剖を通じて、ヤナギマルタマバエが孵化してから成虫になるまでのフェノロジー観察も行った。その結果、ゴールが形成されたシュートほど、シュートが長く成長し、太さも太くなる傾向が見られた。また、ゴールが形成された箇所では枝分かれが生じているのが多く観察された。フェノロジー観察では、幼虫は時間をかけて成長し、冬になってもゴールから出てこないことから休眠し越冬する可能性を示唆できる。また、幼虫の主な死因は落枝、枯死、天敵による捕食であった。これらの結果から、ヤナギマルタマバエのゴール形成によるジャヤナギの生長に対しての影響と、それがどう次世代の幼虫に対して有利にはたらくのかということに、焦点を当てて議論する。


日本生態学会