| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-147 (Poster presentation)
土壌動物は摂食や繁殖を土壌で行う動物を指し、落葉や枯れた根などの枯死有機物を食べて暮らしている生物群集である。これらの生物群集はリター分解への寄与や物質循環への寄与など、生態系において重要な役割を持つことが知られているが、異なる環境における群集組成の違いや空間的な分布に関しては知見が不足している。そこで本研究では、異なる植生・管理条件下における土壌動物の群集組成とリター分解率の関係について明らかとすることを目的とし、土壌動物の群集組成調査とリターバック実験を行った。
調査は4つの異なる環境(伐採地・植林地・湿地・樹林)を対象に行った。土壌動物調査はそれぞれの調査地で土壌を採取したのち、ツルグレン装置を用いて土壌動物を採取し、同定と個体数の計測をおこなった。また、4つの調査地においてリターバック法を用いたリター分解率を推定した。
土壌環境は、樹林と湿地よりも伐採地と植林地の地温が高い環境であり、樹林が乾燥する傾向にあった。土壌動物の種数が最も多く認められたのは樹林あり、最も種数が少なかったのは湿地であった。樹林で確認された大型土壌動物が、伐採地と植林地では確認できなかった。また、リター分解率は樹林、伐採地、植林地、湿地の順で分解率が高いことが分かった。1ヶ月あたりのリター分解率と土壌動物の個体数の散布図を作成したところ、植林地でのみ有意であった(r=0.71,p値=0.02)。従って、人為的攪乱後の環境では土壌動物が減少し、特に大型土壌動物に対する影響が大きいことが示唆された。また、土壌動物の多い環境とリター分解率の速い環境に相関が認められなかったことから、土壌動物がリター分解率に与える影響は小さいことが示唆された。