| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-149  (Poster presentation)

種の多様性が森林の生産量の安定性に及ぼす影響【A】【O】
Effects of species diversity on the stability of forest production【A】【O】

*藤間聖乃(信州大学), Jiri DOLEZAL(Institute of Botany, CAS), 高橋耕一(信州大学)
*Kiyono FUJIMA(Shinshu Univ.), Jiri DOLEZAL(Institute of Botany, CAS), Koichi TAKAHASHI(Shinshu Univ.)

森林生産量の安定性は、種多様性が重要な要因と考えられている。これまでの研究で、種多様性が高い地域では、単一種の林と比較して生産量が高く、種の非同調性の増加によって生産量が安定するという報告がある。しかし、気象条件や環境によって樹木の生産量を制限する要因は異なるため、気温や降水量、個体間の相互作用も安定性の要因として考えられる。そこで本研究では、日本全国の森林を対象として、安定性の要因である種多様性に着目し、気象や森林の構造、競争など、安定性に影響を与える要因の特定とそのメカニズムを解明することを目的としている。

この研究では、モニタリング1000の毎木調査のデータのうち、毎年、毎木調査を行っているコアサイト19箇所のみのデータを用いた。多くは 100 x 100 mのプロットであり、それを小グリッド(10m×10mと20m×20mの2通り)に分割して解析を行った。各グリッドでの生産量の安定性を目的変数として、生産量に影響する環境要因(平均気温、降水量)、種の非同調性、種多様度指数、競争、林分構造(胸高直径の標準偏差)を説明変数とし、構造方程式モデルを作成した。その結果、種の非同調性は安定性に大きく寄与していた。種多様性を含むその他の変数では直接的な影響は強く見られなかったが、種多様性が種の非同調性や林分構造を通じた間接的な影響が見られた。また、20 × 20 m のグリッドサイズでは、安定性と個体間相互作用や気象条件との関係が有意になった。

今回の結果から、安定性に影響を及ぼした変数は、種の非同調性、種多様性、林分構造であり個体間の相互作用の影響は比較的小さいことが分かった。また、気温が高く、降水量が多いサイトでは種多様性が高い傾向があり、種の非同調性を介して安定性に影響を与えていたと考えられる。


日本生態学会