| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-151 (Poster presentation)
維管束着生植物(以下、着生植物)は、樹木に付着して発芽・成長する植物である。着生植物は、空間分布において中立的なプロセスだけでなく、ニッチベースのプロセスも関与しており、時間的動態に対してニッチベースのメカニズムが働いていることが判明している。しかしながら、それらの時間的動態が空間分布に及ぼす影響については明らかになっていない。本研究では、オオタニワタリ類を用いて、着生植物の時間的動態が空間分布に及ぼす影響について検討した。沖縄県の西表島において、ヤエヤマオオタニワタリ(以下、オオタニワタリ)が密生する場所に4つのプロットを作成した。その中の3プロット内の樹木とオオタニワタリの分布・サイズを、2017年・2018年および2023年に記録した。また、2023年により広範囲の空間分布を観察することを目的に、新規プロットを1つ作成し、プロット内の樹木とオオタニワタリの分布・サイズを記録した。調査の結果、オオタニワタリの生存枯死には葉のサイズが関与しており、葉の成長量には立木密度やオオタニワタリ密度のように各個体が受ける光量に関わる環境因子が有意であった。オオタニワタリの水平分布と着生高は、それぞれ立木密度とオオタニワタリ密度で説明でき、葉のサイズと着生高には正の相関が見られた。すなわち、立木密度が低い場所や上部に着生することで他個体の被陰を避けてより成長できるために、死亡率が下がり、現在の空間分布が生じていると推察された。したがって、オオタニワタリの空間分布には中立的なプロセスだけでなく、時間的動態も関与していることが示唆された。