| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-157 (Poster presentation)
チーク(Tectona grandis)は林業上最も価値の高い熱帯広葉樹の1つとして知られ、インドネシア(尼)ではジャワ島を中心に盛んに植林・木材生産がなされている。尼では少ない母樹から造林した遺伝的多様性の低いAcacia mangiumの林が病害により壊滅した例があり、遺伝的背景を考慮した植林は木材生産性において重要とされている。しかし尼はチークの天然分布域外で、現在植林されている個体は天然分布域のどの地域に由来するかは不明確で遺伝的背景は不詳である。さらに気候変動下でも高い木材生産性を維持するためには環境適応性に基づく植林地域の選定や強靭性獲得が必要であることから、植林個体の遺伝的背景や環境適応性の解明が課題となっている。そこで産地試験林の天然由来8集団、ジャワ島在来品種9集団を対象にdd-RAD seqライブラリーをNGSでシークエンスした大規模SNPデータを用いた遺伝構造の解明と環境適応的遺伝子の探索を行った。遺伝構造の解明は244個体、3132遺伝子座を対象に、環境適応的遺伝子の探索は122個体、8948遺伝子座を対象に、Bioclimの公開環境データを使用して行った。
遺伝構造解析の結果、ジャワ島在来品種集団はラオス・ミャンマー集団と近縁であることが分かった。加えて、インドの集団は他の天然由来集団及びジャワ島在来品種集団から大きく遺伝的に分化する結果となった。環境適応的遺伝子候補として548SNPが検出され、一部のSNPはmRNAへの転写領域と連鎖不平衡の状態であることが分かった。遺伝子頻度と気候データの勾配変化の差から、インド集団がその地域に局所適応している可能性が示唆された。この地域と気候が類似した中・東部ジャワの一部地域でも適応的な可能性がある。