| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-159 (Poster presentation)
九州の照葉樹林では、イスノキ(Distylium racemosum)は他樹種と比較して高い耐陰性を持ち、林冠構成種として優占する。本研究では屋久島の標高170〜700mのイスノキの優占度が高い原生的照葉樹林に設定された7プロット(計約3.3ha)について2023年に毎木調査を行い、イスノキとその他の樹種の死亡率と成長率を解析した。7プロットのうち5つは面積0.25〜1haの大面積プロットであるが、残りの2つは小面積プロットを合わせたもので、1つは閉鎖林冠を持つ林分、もう1つは林冠ギャップに設定されたものである。調査対象は胸高直径(DBH)15cm以上である。イスノキは7プロットのうち、4プロットで50%に近い相対胸高断面積(RBA)を示して優占していた。イスノキの死亡率は全てのプロットで他種と比べて低い水準を示し、イスノキが高い耐陰性を持つことを示した。7つのプロットの間で、イスノキの平均成長率とそのRBAとの間には負の相関がみられた。また成長率のDBH依存パターンがプロットにより変化した。ギャッププロットでは小さいDBHにおいてイスノキ以外の種の成長率が高まっていた。以上の結果は、イスノキ優占林分においてイスノキの成長率が低下すること、およびギャップ形成により、イスノキの優占度に上限があることを示唆する。