| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-160  (Poster presentation)

キナバル山の標高・土壌傾度における樹木の死亡パターン【A】【O】
Tree mortality patterns along elevational and edaphic gradients on Mount Kinabalu【A】【O】

*澤本丈弥(北海道大学), 相場慎一郎(北海道大学), 北山兼弘(京都大学)
*Joya SAWAMOTO(Hokkaido Univ.), Shin-ichiro AIBA(Hokkaido Univ.), Kanehiro KITAYAMA(Kyoto Univ.)

ボルネオ・キナバル山の標高1700mにおいて3種類(第四紀堆積岩・第三紀堆積岩・蛇紋
岩)、2700mにおいて2種類(第三紀堆積岩・蛇紋岩)の地質上に設置された調査区を2023年に再調査して、樹木の死亡パターンを成長速度と関連づけて解析した。調査対象は胸高直径(DBH)5cm以上の樹木である。これらの調査区では1997~2019年には2年ごとに毎木調査が行われている。地質ごとの土壌栄養分の可給性は第四紀堆積岩>第三紀堆積岩>蛇紋岩の順に低下する。

2013~2023年の5回調査において各調査区で得られた crown position index(CPI)とDBH
の関係にロジスティック回帰をあてはめ、50%以上が林冠木になるDBHを推定し、全調査
区において林冠木と下層木を区分した。次に各調査区の林冠木・下層木について死亡率・成長速度の経年変化を地質・標高間で比較した。

その結果、エルニーニョ旱魃を含む1997~1999年において、蛇紋岩以外の地質で林冠木
の死亡率が高い傾向がみられ、標高1700mでは第四紀堆積岩>第三紀堆積岩>蛇紋岩、標
高 2700mでは第三紀堆積岩>蛇紋岩の順であった。1997~1999年における下層木の死亡
率は標高2700mの蛇紋岩を除くすべての調査区で高い傾向がみられた。旱魃後1999~2003年では、標高1700mにおける林冠木の成長速度は、第四紀堆積岩>第三紀堆積岩>蛇紋岩の順であった。下層木の成長速度も旱魃後に高まる傾向が見られたが、2003年以降では地質によって異なり、第四紀堆積岩では減少していたのに対し蛇紋岩では上昇していた。標高2700mでは、林冠木・下層木とも、旱魃後の 1999~2011年の成長速度は第三紀堆積岩>蛇紋岩の順であり、第三紀堆積岩では時間とともに成長速度が上昇していた。


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