| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-165 (Poster presentation)
細根動態を経時的に観察する方法の一つとしてスキャナ法が利用される。スキャナ法を用いた解析では撮影された土壌断面画像中の細根を手動でトレースし、細根動態を解析するという手法がとられる。しかし、手動による細根のトレースには、多くの時間がかかり、解析者の経験則や主観によって均一性が失われるという問題がある。そこで、新たな解析方法としてディープラーニングを用いて学習させる画像識別AIのRootPainterを使用することが行われている。Root Painterによるトレースがどの程度、解析者のトレースに近づくのかについては過去の研究において解明されている。本研究ではRootPainter利用して細根の経時的な動態を解析することが可能であるかを解明することが目的である。
解析にはスキャナ法で撮影された土壌断面画像を使用した。RootPainterがトレースしただけの画像では、手法的な問題により経時的な細根動態の解析には使用できない。Root Painterによるトレース精度を確認するために、本研究では3つのエラーを設定した。解析者がトレースしているがRootPainterではトレースされていないエラーをエラー1、根がない部分であるのにRootPainterがトレースしているエラーをエラー2a、細根を太くトレースしているエラーをエラー2bとした。エラー1が最も減少したとき、画像中の細根の約76%がトレースできた。また、エラー2aが最もRootPainterのトレース結果の過大評価に寄与しているエラーであることが分かった。3つのエラー中もっとも簡単に補正できるエラー2aを手動で削除する「ハイブリット方式」を利用したところ、細根動態の経時的な変化、タイムターンオーバーをとらえられることが示唆される結果を得られた。さらに、従来の方法と比べて解析時間の40%短縮が実現できた。