| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-169  (Poster presentation)

火入れ草原における絶滅危惧植物種の多様性維持機構:土壌特性と植生高に着目して【A】【O】
Specific soil condition and low vegetation height maintain high plant diversity in fire-managed grasslands【A】【O】

*朝田愛理(神戸大学), 大脇淳(桜美林大学), 矢井田友暉(神戸大学), 川上風馬(神戸大学), 増田祐季(神戸大学), 丑丸敦史(神戸大学)
*Airi ASADA(Kobe Univ.), Atsushi OHWAKI(J. F. Oberlin Univ.), Yuki A. YAIDA(Kobe Univ.), Fuma KAWAKAMI(Kobe Univ.), Masaki MASUDA(Kobe Univ.), Atushi USHIMARU(Kobe Univ.)

国内外の半自然草原は、人の管理下で維持されてきたが、放牧や草刈りは重労働であるため、近年、草原管理が放棄される傾向にある。一方、より広範囲を管理できる火入れのみで維持される草原(火入れ草原)が、多くの地域で増加している。火入れ草原では、火入れと他の管理を組み合わせて維持する草原に比べて、植生高が高くなり、背の低い植物(特に絶滅危惧種)の多様性が低くなることが、複数地域から報告されている。火入れ草原が増加する状況下で、植物の多様性が高い火入れ草原はあるのか、火入れ草原での高い多様性はどのように維持されうるのかを明らかにすることは、草原性植物保全の上で喫緊の課題である。森林が極相となる温帯域でも、岩角地などの特異な土壌環境がみられる場所では、植生高の低い自然草原が成立する。そこで本研究では、火入れ草原でも、土壌が浅く、植生高が低い環境では、絶滅危惧種を含めた草原性植物の多様性が維持されうるという仮説を立て、その検証を行った。具体的には、母材の違いによる土壌発達の差異に着目し、母材の異なる火入れ草原の間の土壌環境および植物の多様性を比較した。2022年は溶岩またはスコリアを基岩とする梨ケ原を、2023年は結晶片岩を基岩とする生石高原と火山灰を母材とする開田高原を調査地とし、より土壌が未発達な火入れ草原で、植物種の多様性が最も高くなるという作業仮設を検証することを目的とした。
調査では、1mプロットを梨ケ原の溶岩・スコリア草原に50ずつ、生石高原・開田高原に40ずつ設け、6,9月に植生調査、9月に土壌環境要因の測定を行った。その結果、梨ケ原の形成年代の新しい溶岩上で、土壌が浅く、植生高が低く、在来草原性植物種数・絶滅危惧種の多様性ともに最も高くなった。母材タイプごとに種組成の分散と重心は異なっており、新しい溶岩上の草原の種組成は絶滅危惧種を含む植物の多様性が高いことに特徴づけられた。


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