| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-170  (Poster presentation)

気候変動下でササは森林の生産性にどのような影響を与えるか?【A】【O】
Predicting the Impact of Sasa on Forest Productivity Under Climate Change【A】【O】

*Ai OBATA(University of Tokyo), Hisashi SATO(JAMSTEC, University of Tokyo), Tsutom HIURA(University of Tokyo)

 日本の冷温帯に属する森林では、しばしば林床にササが優占し樹木の更新を阻害する。これらのササは最大で高さが約3mまで成長し、この地域の森林の根バイオマスの半分を占めるとの報告もある。したがって、ササは森林の炭素循環と動態において重要な役割を果たしていると考えられている。
 北海道地域では気候変動により台風頻度の増加が予想されており、風攪乱の頻度の増加は森林の炭素貯留量を減少させる可能性がある。このため、本研究では、気候変動下でササが森林の生態系機能に与える影響を明らかにするために動的植生モデルの1種であるSEIB-DGVMに3種類のササを導入し、北海道全域で林床にササが分布した森林の炭素貯留量分布と種分布を予測した。北海道中川研究林で3種のササの成長をシミュレーションした結果、チシマザサとクマイザサのバイオマスはほぼ等しく、ミヤコザサのバイオマスはチシマザサ、クマイザサのバイオマスの0.5倍だった。また、種分布は気温の上昇と積雪深の減少に規定されるためミヤコザサの分布拡大が予測されている。このことから将来的に北海道のササ類のバイオマスは減少することが予測された。
 本モデルはササの種間の差と成長をプロセスベースで導入することで、より現実に近い過程でササを林床植生に持つ森林をシミュレーションすることを可能にした。一般的に植生モデルによるバイオマスの予測は温暖化が現在分布している種の成長に与える影響に注目してきた。本研究では気候変動による成長変化に加えて、種分布の変化を考慮することが気候変動下での森林の機能を予測するうえで重要であることを示唆している。


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