| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-173  (Poster presentation)

イノシシの掘り起こしを模倣した土壌攪乱の多様性が半自然草地群落に及ぼす影響【A】
Does plant diversity of semi-natural grassland differ across soil disturbance types mimicking wild boar rooting?【A】

*梅田悠起(近畿大院・農), 田中健太(筑波大・山岳セ), 幸田良介(大阪環農水研・多様性), 平岩将良(近畿大・農), 竹内遼(近畿大・農), 早坂大亮(近畿大・農)
*Yuki UMEDA(Grad sch agric, Kindai Univ), Kents TANAKA(MSC, Univ. Tsukuba), Ryosuke KODA(RIEAFO, Biodiv), Masayoshi HIRAIWA(Fac Agric, Kindai Univ), Ryo TAKEUCHI(Fac Agric, Kindai Univ), Daisuke HAYASAKA(Fac Agric, Kindai Univ)

野生動物による攪乱は生態系に様々な影響をもたらしている。その例として、シカによる植物の地上部の摂食が挙げられる。また、イノシシは掘り起こしと呼ばれる土壌攪乱を引きおこし、地上部だけでなく地下部にも影響を与え、生態系エンジニアとして機能する。例えば、イノシシの掘り起こしによる土壌撹乱により森林の植物群集の多様性が向上したことが報告されており、植物多様性の維持にイノシシの掘り起こしが注目されつつある。その一方、イノシシの掘り起こしが植物多様性に及ぼす影響を調べた研究は、攪乱が少ない森林に限定されており、イノシシ以外の攪乱との結びつきが強い草地における研究例は少ない。しかし、掘り起こしの深さにばらつきが見られること、耕運と類似の土壌攪乱が形成されるように、多様な攪乱形態が存在することから、イノシシの掘り起こしは多様な攪乱を与えることで草地性植物の多様性に貢献している可能性は否定できない。そこで本研究では、掘り起こしが草地の植物群集に与える影響の解明に向け、先行研究を参考に、1㎡のコドラートを設置し、掘り起こしを模倣した人工攪乱を実施した。掘り起こしの多様性を考慮し、深さ3段階(5㎝、10㎝、20㎝)、形状3処理(掘り下げ、盛土、耕運)を組み合わせ、対照区を含め計10処理を用意し、処理後、定期的に植生調査などを実施した。
調査の結果、対照区と処理区ともによく確認された種やいずれかの区に偏って出現した種が存在した。処理区で確認された種のなかには、深度が浅い場所あるいは深い場所に偏って出現する種がいたことから、掘り起こし深度は種組成に影響を与えていると考えられる。本結果はイノシシの掘り起こしを模した人工攪乱の結果ではあるものの、イノシシの掘り起こしが攪乱の多い草地においても、植物多様性の維持に重要な役割を果たしている可能性が示唆された。


日本生態学会