| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-174 (Poster presentation)
湿原は絶滅危惧植物の貴重な生育地であるが、近年は外来種の侵入による希少植物の減少が懸念される。一方で、外来種の侵入による影響は種によって異なるため、種ごとに外来種の侵入に対する応答を検証する必要がある。そこで本研究では、生育条件や群落の階層構造による空間的すみわけと季節変化による時間的すみわけに着目し、絶滅危惧植物の生存戦略を明らかにする。
調査地は茨城県南部の湿原である。1 m×1 mの調査区が、環境省および茨城県レッドデータブック掲載種が優占する希少種群落、セイタカアワダチソウが優占する外来種群落、オギやヨシが優占する在来種群落に各20個ずつ、計60個配置された。植生調査によって、被度と最大草丈が記録され、土壌含水率と相対光量子密度が計測された。解析は指標種分析、非計量多次元尺度構成法(NMDS)に加え、絶滅危惧植物の優占度を応答変数、セイタカアワダチソウの優占度を説明変数とした一般化線形モデル(GLM)での線形回帰を行った。
総出現種数は92種であった。環境省および茨城県のレッドデータブック掲載種は9種であった。指標種分析の結果、希少種群落において春にノウルシ、通年でナガボノワレモコウなどが抽出された。外来種群落において春にヒキノカサ、夏にヒメナミキが選ばれた。NMDSの結果から、種組成は春に各群落で異なっていたが、夏から秋にかけて外来種群落と希少種群落の間で類似した。セイタカアワダチソウの優占度を説明変数としたGLMの結果から、ノウルシ・ヒメナミキ(春)・ナガボノワレモコウの優占度は負の相関を示した。一方で、ヒキノカサ・ヒメナミキ(夏)の優占度は正の相関を示した。
これらの結果から、ナガボノワレモコウとチョウジソウは生育条件の違いで、ヒメナミキは生育位置の空間的違いで、ノウルシとヒキノカサは生育時期の時間的違いで、セイタカアワダチソウとすみわけていることが示唆された。