| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-179  (Poster presentation)

中国山地のカキツバタ自生地における主要湿生植物の季節成長【A】【O】
Seasonal growth of major hygrophytes in the wild iris habitat in the Chugoku mountains【A】【O】

*久保田憲, 永松大(鳥取大学)
*Ken KUBOTA, Dai NAGAMATSU(Tottori Univ.)

国の天然記念物唐川のカキツバタ群落では近年カキツバタの開花数が減少しており、保全の必要性が高まっている。そこでカキツバタと他種が季節的にどのように競合しているのかを明らかにするために、唐川湿原で主要な5種の成長特性を解析した。
調査対象は同湿原の主要構成種5種,カキツバタ、カサスゲ、トダシバ、ヌマトラノオ、ミズオトギリとした。月2回の調査で代表的な成長をしていた5個体を選び、草丈、植物高、葉身幅、葉身長、葉身厚、茎幅、葉数を計測した。カキツバタを除いた4種をサンプルし,葉面積と地上部乾重量を測定した。カキツバタは植物高や葉身幅から推定した値を用いた。成長解析の指標として測定回間のRGR、NAR、LAR、LWR、SLAを算出した。
カキツバタとカサスゲはどちらも春の初期成長量が大きく,草丈70 cmほどとなって初夏に開花する。両種ともLWR(個体重あたりの葉重)を増加させることでRGRを高めていた。カキツバタとカサスゲはよく似た成長特性を有しており,この点で競合しやすいと推測された。カキツバタは花期後のRGRが低かったが,カサスゲはRGRが低下せずに成長し、花期後はカキツバタを被陰する可能性が考えられた。トダシバはカキツバタの花期までに草丈70 ㎝に達し、その後カキツバタよりも高く成長した。NAR(葉面積あたり成長速度)が高かったことから、トダシバは光合成能力が高いことが推察された。したがって、トダシバとカキツバタは光をめぐって競合していることが考えられた。ミズオトギリは発芽が5月上旬と遅く花期のカキツバタを被陰しなかったが,花期の9月に主に40 cmから80 cmの高さで葉を薄く広げた。秋のカキツバタを被陰している可能性が示唆された。ヌマトラノオはRGRや葉重、葉面積が小さく草丈も低く,カキツバタとは直接競合しないと考えられた。以上からカキツバタの保全にはカサスゲを抑えることが効果的と考えられる。


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