| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-182 (Poster presentation)
アレロパシーには一般的に他種の発芽・成長を抑制する効果があるが、自種に対しても自家中毒といった抑制効果がみられることもある。しかし、多くの草本はパッチ状に密集して生育することも多く、自種の発芽を妨げる効果は不利に働く可能性がある。野外環境では、自家中毒を緩和させる機構があるのかもしれない。本研究では、オオバコ属の2種(オオバコ、ヘラオオバコ)を用いて、自種への抑制を緩和する機構として集団内の血縁度と遺伝子型多様性に着目し発芽実験を行った。発芽に対する植物体の影響は、寒天培地で植物組織を挟んで滲出物の効果を定量するサンドウィッチ法を用いて評価した。培地に挟み込む乾燥葉の提供者として、種子親個体・同集団他個体1系統または3系統混合の3条件を設定し、対照区には同量の濾紙を挟んだ。対象2種のいずれにおいても、自種の発芽に影響しなかったものの、実生の幼根の成長を抑制する自家中毒が見られた。オオバコでは、種子親からの抑制効果は他個体からよりも弱く、血縁度の高い種子は抑制しにくかった。また、乾燥葉の提供者が単一個体よりも複数個体のときに幼根長は短くなった。この傾向はヘラオオバコではみられなかった。主に自殖するオオバコでは、血縁度と他個体の遺伝的多様性が自家中毒の緩和に寄与することが示唆された。しかし、集団や家系による効果のばらつきは大きく、個体ごとに他個体に対する抑制効果、他個体からの刺激への感受性などに高い多様性もみられた。