| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-184  (Poster presentation)

野外における海産緑藻の微視的な世代に着目した繁殖戦略の解明【A】【O】
Reproductive strategies of marine green algae in the field focusing on microscopic generations.【A】【O】

*望月康生(千葉大・海洋バイオ), 川口勝弘(千葉大・海洋バイオ), 堀之内祐介(北大・SFC・室蘭, 千葉大・海洋バイオ), 富樫辰也(千葉大・海洋バイオ)
*Kosei MOCHIZUKI(Mar. Biosys., Chiba Univ.), Katsuhiro KAWAGUCHI(Mar. Biosys., Chiba Univ.), Yusuke HORINOUCHI(Muroran, FSC, Hokkaido Univ., Mar. Biosys., Chiba Univ.), Tatsuya TOGASHI(Mar. Biosys., Chiba Univ.)

潮間帯の上部に生息する海産緑藻の多くは、潮汐変動を利用した雌雄配偶子の同時放出システムを用いたり、配偶子が示す正の走光性により海面の二次元平面を配偶子の集合場所として利用するなど、効率的に有性生殖を行うための繁殖戦略をとっていると考えられている。潮間帯上部を主な生息域とするヒビミドロ目の海産緑藻の生活史は単複相の異型世代交代で、冬から春先に繁茂する単相の配偶体は有性生殖を行った後6月頃には消失し、以降次の冬が来るまでは複相の微視的なシストとして過ごす。ただし、このシストは配偶子の単為発生によっても形成されることから、夏のシスト集団にはその両者が混在している。シスト集団における有性生殖と単為発生の割合を検出することができれば、繁殖戦略が実際に有性生殖の効率化に寄与しているかどうかを実験的に検証できるが、単核単細胞であるシストは発見報告や実験的に扱う先例に乏しい。このような繁殖戦略の検証を目的に、我々は北海道沿岸に繁茂するヒビミドロ目の海産緑藻エゾヒトエグサに着目した。エゾヒトエグサは大潮の昼の干潮時に放出促進物質の濃度が高まることで雌雄配偶子の同時放出を行うが、潮汐変動が小さく同時放出システムが機能しない日本海側にも生息している。太平洋側の室蘭市沿岸と日本海側の小樽市沿岸について、両集団における有性生殖と単為発生の割合の検出のため、エゾヒトエグサの野外シストを探索するとともに、シストからの性特異的領域の検出のためのマーカーを作成した。野外シストは配偶体の分布域における砂粒に穿孔していることが発見され、接合子が示す負の走光性により速やかに着底していることが示唆された。単核単細胞であるシストから性特異的領域を検出する分子マーカーを開発することで、個々のシストが有性生殖と単為発生のどちらに由来するかを容易に区別することが可能となり、今後の解析への技術的基盤を構築できた。


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