| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-191  (Poster presentation)

草原植物140種における内生Colletotrichum菌の宿主・季節特異性-環境DNA法と培養法-【A】
Host- and season-specificity of endophytic Colletotrichum fungi in 140 species of glassland plants - Environmental DNA and culture method -【A】

*鈴木暁久(筑波大・山岳セ), 氏松蓮(東京大学), UTAMIYuniar(東京大学), 晝間敬(東京大学), 田中健太(筑波大・山岳セ)
*Akihisa SUZUKI(MSC, Univ. Tsukuba), Ren UJIMATSU(Univ. Tokyo), Yuniar Devi UTAMI(Univ. Tokyo), Kei HIRUMA(Univ. Tokyo), Tanaka KENTA(MSC, Univ. Tsukuba)

植物と共生する真菌の一部は植物の免疫機能の強化や、土壌からの栄養輸送を行うことが知られている。従来、外生菌根菌やアーバスキュラー菌根菌が注目されてきたが、 それ以外の多様な菌も植物-菌ネットワークで中心的な役割を果たしている可能性がある 。一般に植物病原菌と考えられているColletotrichum属菌は、貧栄養環境下でシロイヌナズナの成長を助ける種が存在する。本研究は、同じく貧栄養環境である草原の植物群集においてColletotrichum属菌の内生が異なる季節においてどれほど一般的なのか、どの程度の宿主特異性があるかを、環境DNA手法と培養手法の両面から明らかにする。 試料は長野県・菅平高原の在来植物が優占する歴史の古い草原において、2017年から2023年にかけて約140種の植物から採取された。環境DNAデータは、2017年の試料を用いて内生真菌・細菌を網羅的に検出したものの配列データを利用した。菌の培養は 2021・2023年に採取された植物の表面殺菌後、 寒天培地上で植物から培地上に生じたコロニーの単離により行なった。種推定はITS領域のシーケンシングにより行なった。 その結果、環境DNA配列データに含まれていた配列はColletotrichum属菌15種に対応していると推定された。培養法による分離株87株から検出されたColletotrichum属菌は、ITS領域の配列から10種に対応していると推定された。環境DNAと培養株の比較から、7種が一致していると推定された。環境DNAデータでは、Colletotrichum属菌の検出割合が葉では64%、根では18%で、葉の方が高かった(p < 0.001)。また、検出されたColletotrichum属菌の全てで、葉における検出割合が根の2.2~9倍以上だった。培地培養では、Colletotrichum属菌の検出割合が6月には26%、11月には39%であり、有意な差はなかった(p = 0.38)。


日本生態学会