| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-193  (Poster presentation)

温帯の木本性つる植物における木部道管形質とその地理変異の登攀様式間差【A】【O】
Difference in xylem vessel traits and the geographical variation among climbing types of temperate liana species【A】【O】

*日下部玄(東京大学), 半智史(東京農工大学), 船田良(東京農工大学), 日浦勉(東京大学)
*Gen KUSAKABE(The University of Tokyo), Satoshi NAKABA(TUAT), Ryo FUNADA(TUAT), Tsutom HIURA(The University of Tokyo)

 北半球では木本性つる植物(以下:つる植物)のアバンダンスは気温低下に伴い他の成長型の植物と比べ著しく減少する。これはつる植物の特徴とされる大きな道管が寒冷環境下で凍結融解エンボリズムによる機能不全に陥りやすく,競争力が低下するためと解釈されてきた。
一方日本の森林では,茎の巻き付きで登攀するtwining climberは気温とアバンダンスの正の関係が見られるものの,付着根で登攀するroot climberでは気温との関係性はみられなかった。ここから,この2つの登攀様式のつる植物は異なる木部道管構造を持つ可能性が考えられる。
また,一部の樹種は道管サイズに二型が見られ,大径道管は通水効率を,小径道管は安全性を高める機能を担う可能性が指摘されている。
 本研究では,日本に広域分布するtwining climber 3種,root climber 4種を含む8種のつる植物を対象に木部道管形質の登攀様式間差と種間差,およびその地理変異を解析した。各種5–13地点で,胸高直径2–4 cmの3–5個体を対象に胸高部の木材円盤を採取した。各円盤の横断面の採取前年から3–5層程度の成長輪の道管を計測した。道管二型を示す種は混合正規分布モデルを用いて道管を区分した。全道管および各道管区分で,道管形質値と潜在通道度(BC)を計算し,採取地の年平均気温との関係を線形混合効果モデルを用いて解析した。
 全道管を対象にした場合,twining climberはroot climberと比べ平均道管径,BCが大きく,道管密度は小さかった。各道管区分では大径道管の平均道管径とBCで,全道管と同様の傾向が見られた。一部の種では気温低下に伴いBCは低下したが,登攀様式による傾向はみられなかった。これらの種では道管形質と気温の関係が検出されたが,そのパタンは種間で異なった。
 道管構造の登攀様式間差は日本のつる植物の分布パタンの登攀様式間差の一因と考えられる。気温に伴う道管構造の変異は分布の登攀様式間差を説明しないが,気温低下に伴うつる植物の減少の一因かもしれない。


日本生態学会