| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-198 (Poster presentation)
植物生産力の推定に関わるシミュレーションモデルには、気象要素と観測された純生産量の回帰に基づいて純生産量を推定する単純なモデルから、地球システムのさまざまなプロセスを統合し計算することで植物生産力のみならず生物物理的、生物地球化学的なプロセスを明らかにしようとする陸域生態系モデルまでさまざまである。しかし前者のモデルは将来予測という面で非常に力不足であり、後者のモデルは非常に複雑で膨大な計算を行うため一般に我々が気軽に扱えるとは限らない上に、さまざまな種類のデータを入力する必要がある。したがって、Atsumi(2015)はアクセスが容易で一般的な気象要素で駆動する植物生産力推定のためのモデル(Climate-driven Model Suited for Estimating Productivity: CMSEP)を開発した。
そこで本研究ではCMSEPを用いて、全国的に気候の年々変動に対して植物生産力はどのように応答しているのかを明らかにすることを目的とし、気象庁(2023)が公開している気象データを利用して2001年から2023年における年間生産力の推定をおこなった。シミュレーションの結果、2001年から2023年にかけて年間の総生産量が増加している地域があることがわかった。しかし、夏季の高温と小雨が顕著であった2023年の生産力を単独で推定したところ、落葉の遅れを適切に表現しきれていないことが明らかとなり、生産力の推定が温量資源や水資源と比較して日長に大きく制限されていることがわかった。