| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-202  (Poster presentation)

共通圃場実験による日本の主要樹種の実生の窒素利用効率とその構成要素の種間比較【A】【O】
Comparing N use efficiency and its component among seedlings of Japanese dominant trees by common garden experiment【A】【O】

*鈴木桂実(東北大学), 廣川周作(東北大学), 梶野浩史(東北大学), 冨松元(東北大学), 門脇浩明(京都大学), 彦坂幸毅(東北大学)
*Katsumi SUZUKI(Tohoku Univ.), Syusaku HIROKAWA(Tohoku Univ.), Hirofumi KAJINO(Tohoku Univ.), Hajime TOMIMATSU(Tohoku Univ.), Kohmei KADOWAKI(Kyoto Univ.), Kouki HIKOSAKA(Tohoku Univ.)

窒素は多くの生態系で植物の成長を制限し、その獲得や利用は植物の生存戦略と関係する。窒素の獲得と利用に関連する主な形質として、根の窒素獲得効率(根重あたり窒素吸収速度NAE)、保有窒素あたりの成長速度(窒素生産力NP)、窒素滞留時間(MRT:吸収された窒素が放出されるまでの時間)が挙げられる。これらの形質については、先行研究によってNPとMRTの間にトレードオフがあり、落葉種に比べ常緑種はNPが低くMRTが長いこと、貧栄養条件ではMRTを長くすることが有利であることなどが示されてきた。しかし、気温や降水量などのマクロな気候条件とどのように関連するのかは明らかではない。また、落葉種内・常緑種内のそれぞれで形質間にどのような関係があるのかも明らかではない。本研究では、窒素の獲得と利用に関する植物種間の遺伝的差異に着目し、分布域が異なる日本の主要構成樹種の種子を収集し、共通圃場にて植物を育成して窒素獲得と利用に関連する形質を測定し、分布の環境情報との関係を調べた。
モニタリングサイト1000の森林サイトにおいて優占し出現頻度の多い種を選び、2年間栽培した。各種3個体を選び、毎月の基部直径や葉フェノロジーの測定と2回の刈り取りによる重量測定から、常緑樹6種と落葉樹15種の非定常状態における窒素獲得効率(NAE=窒素獲得量/根重)やNUEなどを計算した。各森林サイトの年間降水量、年平均気温や標高、土壌中の無機窒素量と種の分布に関する情報は文献から入手した。なお、本研究では、50種についての実験を2年に分けて行っており、本発表では1年目に播種した21種の結果を報告する。
各パラメータと種の生息環境を比較すると気温や降水量が大きく、無機窒素が少ない場所ではNPが小さく、MRTが長い傾向にあった。
気温が高い地域では一度吸収した窒素を長く使う種が多いことが明らかになった。今後は現在栽培中の2年目に播種した種についても計測を続ける予定である。


日本生態学会