| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-203  (Poster presentation)

水平方向に伸びる側枝は通水機能が制限される:力学的ストレスと通水機能の関係【A】【O】
Horizontally elongating lateral shoots form xylem with low hydraulic function: relationship between mechanical stress and hydraulic function【A】【O】

*横山大輝, 吉村謙一(山形大学)
*Daiki YOKOYAMA, Kenichi YOSHIMURA(Yamagata Univ.)

 樹木はより多くの光を獲得するために、自個体や他個体の枝の影にならないように配置させなければならない。これを満たすために、垂直だけではなく水平方向に枝を伸ばすことが重要であるが、水平方向に伸びた枝は自重による曲げモーメントが大きくなりやすい。加えて、枝は水を葉や芽まで水を輸送する器官でもある。水は木部中の道管を通り、道管径が大きい木部は通水機能が高い。しかし、木部は通水機能だけではなく、支持機能も有しており、支持機能が高い木部は通水機能が低い。実際、水平方向に伸びる側枝は頂枝より通水機能が低いことが知られているため、頂枝-側枝間の通水機能のヒエラルキー構造は自重による曲げモーメントの違いによると考えられた。そのため、本研究では力学及び解剖学的アプローチで頂枝-側枝間に通水機能のヒエラルキー構造が生じるメカニズムを解明することを目的とした。
 ムラサキヤシオツツジ(Rhododendron albrechtii)を対象とし、当年生の頂枝と側枝の長さと太さと天頂角、葉と枝の生重、等分布荷重を仮定した自重による曲げモーメント、道管径と木部面積、Hagen-Poiseuilleの式より通水性を測定した。
 側枝は頂枝より天頂角が大きく、枝の水平距離が大きかった。しかし、側枝は葉の生重や木部面積が小さかったため、頂枝より水平距離に対する自重による曲げモーメントが小さかった。頂枝の道管径は天頂角と負の相関関係にあったが、側枝の道管径は天頂角と関連しておらず、一定であった。Hagen-Poiseuilleの式により通水性は道管半径の4 乗に比例する。天頂角が大きくなっても大きい道管径を維持できる側枝は、木部面積が小さいことが原因で通水性が頂枝より小さくはあるが、極端な通水性の低下を回避していると考えられた。さらに、発表では曲げモーメントや通水機能と曲げ剛性及び曲げ弾性係数との関係についても議論し、側枝の支持機能と通水機能の関係を解明する。


日本生態学会