| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-205 (Poster presentation)
野外では、気孔はしばしば日中にも閉鎖しており、光合成を押し下げるため、生態系の炭素収支の予測には気孔の開き具合(=気孔コンダクタンス gs)の日変化の正確な予測が必要である。気孔は光が当たることで開くが、日中に閉じる理由は蒸散を抑えてエンボリズムの危険を低下させるためと考えられており、これに関わる土壌含水率の低下、植物の水ポテンシャルの低下、日中の気温上昇による飽差の上昇といった諸要因とgsとの関係性が調べられてきた。しかし、これらの複数の要因の野外での相対的な重要性は不明確である。本研究では落葉樹3種(コナラQuercus serrata、カキDiospyros kaki、クヌギQ. acutissima)の2年生鉢植え実生12個体ずつを、共通圃場で生育させた。8月17日から31日の間、毎日の水やりで土壌水分を維持する個体 (wet)と水やりを中止する個体(dry)に分け、2-3日ごとにgsの日中1時間間隔の測定を行い、最後に水ポテンシャルを測定し収穫した。結果、このおよそ2週間において、wet個体のgsは高く保たれていた一方、土壌含水率が大きく減少したdry個体のgsはほぼ0になった。このgs の違いは蒸散量の違いを生じさせていたが、夜明け前の水ポテンシャルは総じて高く保たれており、日中の水ポテンシャルの低下の違いはほとんど生じていなかった。そこで、土壌含水率と光量、飽差に注目して解析を行ったところ、主に瞬間のgsは光量と土壌含水率によって、日平均のgsは土壌含水率によって決定されることが分かった。さらなる解析により、個体の違いがgsのばらつきに強く影響していることがわかったため、光量、温度、施肥、水やりなどの条件をできるだけ揃えた共通圃場においても生じる個体間のばらつきの要因を知ることがgsの日変化の予測の改善に有効であることが示唆された。