| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-206  (Poster presentation)

ループかツリーか:葉の通水性が介する生育環境に応じた葉脈タイプの進化【A】【O】
Hydraulic conductance mediates the evolution of leaf vein patterns in response to habitat environments【A】【O】

*佐々木陽依, 山尾僚(京都大学)
*Hiyori SASAKI, Akira YAMAWO(Kyoto Univ.)

樹木の生存に欠かせない光合成には多くの水が必要であり、葉脈は葉に水を届ける重要な組織である。葉脈の分岐パターン(葉脈タイプ)は、二次脈の端が他の二次脈につながってループ構造を作るループ型と、ループ構造を作らないツリー型に大別される。過去の理論研究により、ループのない構造はループのある構造よりも、物質の輸送効率が高いことが予測されている。発表者らはこれまでに2,099種の広葉樹各種について、葉脈タイプと全球規模の生育環境との関係を解析し、低温地への進出とツリー型への進化が関連していることを見出した。そこで本研究では、光合成適期の短い低温地に生育する種では、ツリー型の葉脈タイプに進化することで、高い通水性と光合成速度を実現しているという仮説を検証した。国内に分布するカエデ属15種とコナラ属9種を対象として、光合成速度と葉身および二次脈の通水性を測定した。カエデ属では、仮説通りツリー型の種で通水性と光合成速度が大きかった一方で、コナラ属ではループ型の種で葉身の通水性が大きかった。また、コナラ属のツリー型には常緑・落葉性の両種が含まれており、落葉性の種の通水性は常緑性の種よりも大きかった。このことから、葉の通水性は葉脈タイプだけではなく、常緑・落葉性の影響も受けていると考えられた。そこで、常緑・落葉性と葉脈タイプの関係について、広葉樹1115種を対象とした形質進化の解析を実施したところ、ループ型に進化しやすい常緑性の種と比較して、落葉性の種はツリー型に進化しやすいことが明らかになった。つまり、落葉性の種(カエデ属など)ではツリー型、常緑の種(コナラ属など)ではループ型の葉脈タイプが、葉の通水性を最大にする可能性がある。これらの結果から、葉脈タイプは葉の機能形質や生理機能と協調して進化することで、樹木の環境適応を支えていることが示唆された。


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