| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-211 (Poster presentation)
維管束植物では,複数の葉形質間の高い相関が世界規模のメタ解析で示されている。一般に,葉寿命の短い種は,低いLMA(葉面積当たり葉重),高い光合成効率(葉重あたり),高い窒素濃度(葉重あたり),高い気孔コンダクタンスgsを持ち,水浪費型の光合成生産を行う傾向が知られている。本研究室で行われた小笠原諸島父島の木本5種での先行研究でも,葉寿命の短い種やLMAの低い種は,気孔コンダクタンスgsが高く水浪費型で,これらは葉肉CO2コンダクタンスgmも高く葉緑体でのCO2濃度CCが高い傾向が報告されている(松山ら,日本生態学会 2019)。一般に,葉緑体CO2濃度CCの高い光合成生物(C4植物など)は,ルビスコのCO2に対する親和性(CO2/O2比親和性SC/O)が低い傾向がある。本研究では,調査対象種を20種まで増やし,葉寿命の短い種がgmやCCが高くSC/Oが低い傾向にあるのか明らかにする。さらに,葉寿命の短い種において,高いgmをもたらす因子として葉が含有するポリアミンの役割を検討し,植物の水利用戦略にポリアミンやルビスコの性質が持つ生理生態学的な意味を考察する。 小笠原諸島父島の20種のC3木本植物の葉にPAsの生合成阻害剤 DFMO(1 mM)を付与しgmとgsに与える影響を評価した.また,SC/Oとgmについては20種の系統的な距離に依存して生じる種間差の影響をPICにより除去して解析した。その結果,gm,gsおよびCCは,ルビスコのSC/Oと有意な負の相関があり,CO2に対する親和性が低いルビスコを持つ種は,葉内にCO2が拡散しやすい傾向にあることが分かった。さらに,これらの種は,PAs生合成阻害処理によりgmがより大きく低下し(p < 0.05),葉寿命の短い水浪費型の種は,葉肉でのCO2拡散を促進する因子として葉で生合成されるポリアミンが機能していることが示唆された。