| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-215 (Poster presentation)
中央アジアのウズベキスタンでは砂漠化や塩害が深刻化しており、環境修復や防砂を目的とした緑化が行われている。本研究では、緑化材料として広く用いられているC3植物の深根性木本種であるTamarix属5種とC4植物の深根性木本種であるHaloxylon属2種を研究対象とし、ウズベキスタン国内の降水量の異なる3地点で2010、2022、2023年に採取した葉の炭素安定同位体比(δ13C)と酸素安定同位体比(δ18O)を測定した。C3植物において気孔コンダクタンスに対する光合成速度の比である内的水利用効率を反映した値である大気中の二酸化炭素のδ13C(World Data Centre for Greenhouse Gases)と葉のδ13Cの差(Δ13C)およびC3、C4植物のいずれにおいても蒸散量と吸水源のδ18Oの両方を反映した値である葉のδ18Oと年降水量や年降水量を可能蒸発散量で除した値である乾燥度指数(AI)などの環境条件との関係を調べることで、対象植物の水利用特性の環境応答の評価を試みた。その結果、Tamarix属では年降水量が少なく、AIが低い、より乾燥した地点の個体ほどΔ13Cが低く、葉のδ18Oのばらつきが大きく、最大値が高い傾向がみられたことから、乾燥に伴い気孔コンダクタンスを低下させることで蒸散量を減少させ、内的水利用効率を上昇させていることが示唆された。一方で、Haloxylon属ではΔ13CがTamarix属よりも低く、年降水量が少なく、AIが低い、より乾燥した地点の個体ほど葉のδ18Oのばらつきが大きく、最小値が低い傾向がみられた。葉内のカリウム濃度に対するナトリウム濃度の比と葉のδ18Oの関係より、同じ飽差環境では塩分濃度によらず蒸散量が一定に保たれると推測されたことから、より乾燥した地点における葉のδ18Oのばらつきは吸水源のδ18Oのばらつきに起因することが示唆された。