| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-218  (Poster presentation)

高山帯の樹木および低木は土壌中の無機態窒素と有機態窒素のどちらを多く利用するのか【A】
Which do alpine trees and shrubs use more inorganic or organic nitrogen in the soil?【A】

*諏訪竜之介, 伊藤拓生, 岩田拓記, 牧田直樹(信州大学)
*Ryunosuke SUWA, Takumi ITO, Hiroki IWATA, Naoki MAKITA(Shinshu univ.)

窒素(N)は,木本根系による土壌からの養分獲得において最も主要な元素である.一般に,植物は無機態Nであるアンモニアや硝酸を吸収するが,貧栄養な高山帯においては,通常利用されない有機態Nを主なN源として吸収している可能性がある.しかし,高山域のN吸収における有機態Nの寄与や,N嗜好性を変化させる要因については知られていない.本研究では,高山帯の木本根系による無機態および有機態N吸収速度と根特性を調べ,種の養分獲得戦略を解明することを目的とした.
調査は2023年7-8月に,信州大学農学部西駒演習林の将棋の頭(2,670 m a.s.l)周辺で行われた.調査地は森林限界を超えたハイマツ林で,下層には低木が発達している.対象樹種は外生菌根菌(ECM)と共生するハイマツとミヤマハンノキ,エリコイド菌根菌(ERM)と共生するガンコウラン,キバナシャクナゲ,コケモモの計5樹種とした.調査地から,実生個体を丸ごと掘り出し,現場で速やかにN吸収測定を実施した.根系を200 µmol L⁻¹の濃度のN溶液に浸し,一定時間静置させた.静置後,N溶液と根系を回収し,溶液サンプルの濃度差から吸収速度を算出した.また根系サンプルから,根の形態特性および化学特性の算出した.
無機態NであるNH₄⁺とNO₃⁻吸収速度は,コケモモで有意に高かった.有機態N吸収速度ではERM共生種で高い傾向があった.また,各N形態の吸収速度を比較すると,ECM共生種では無機態N,ERM共生種では有機態Nの寄与が大きかった.根組織密度は無機態N吸収速度と負の相関,有機態N吸収速度と正の相関が見られた.高山帯では,根組織密度が高い根,つまり成長速度が遅いがストレス耐性が高い根を分布させることで有機態N吸収速度を向上させる 戦略があることが示唆された.以上より,N嗜好性は種によって異なり,N吸収と根特性の関係はN形態によって異なると考えられる.


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